巻物

巻物（まきもの）

巻物は、古代から存在する図書形態の一つであり、主に巻子本とも呼ばれています。巻物は、内容が記された本文を巻き取ることによって、保管や携帯がしやすくなっています。このスタイルは古代から広く見られ、現代においてもその名残を見ることができます。

歴史的背景

巻物は、巻子装本とも言い、軸を中心にした形状が古代の書物の一つの基本形態とされています。使用される材質には、紙だけでなく、古代のパピルスや羊皮紙なども含まれます。本文は複数のページを接着し、一端に木や竹などの軸を取り付けることで巻き取られる仕組みです。

日本の巻物では、軸の材料として一般的に杉が使われ、高級なものでは紫檀などが用いられることもありました。また、漆や蒔絵などが施されたものも存在し、装飾的な重要性も持っています。今日では、新刊が巻物として出版されることは少なくなりましたが、「巻数」や「全巻」といった言葉にはその名残があります。

西洋における巻物

西洋では、巻物と対をなす形態としてコデックス（冊子状の装丁）が存在します。巻物はロトゥルスとも呼ばれ、縦に長い形状や横に長い形状など、異なる形式があります。中世ヨーロッパにおいては、法文書が羊皮紙に記されることが1850年まで続けられました。具体的には、ユダヤ教のトーラーが代表的な例で、専門の写本家によって厳格に書かれました。特別なケースとして、マルキ・ド・サドの小説『ソドム百二十日』やジャック・ケルアックの『路上』の原稿も巻物の形を採っています。

東洋における巻物

東洋では、巻子装とその対となる帖装（折本や冊子装がそれにあたる）に大別されます。紙が普及する前には、竹や木の片に文字が書かれ、巻かれて保存されていました。この伝統が続き、今日でも巻物は存在し続けています。日本においては、飛鳥時代から奈良時代にかけて、典籍や文書はすべて巻子装で保管されていました。平安時代中期以降は帖装や冊子装が一般的になり、巻子装は公式な記録媒体としての地位を保ち続けます。

日本では、特に平安時代から鎌倉時代にかけて写経が流行し、大量の写経が行われました。また、物語に絵を添えた絵巻物もこの時期に生まれ、文と絵が交互に描かれることで新たな表現法が確立されました。

制作と体裁

巻物は、写経を行う経師や、装丁を手掛ける装演手、校正を行う校生によって作成されます。巻子装は保護的な形状を持っており、外気に触れることが少ないため、保存に適していますが、全てを巻き開く必要があるため、閲覧時の不便さも伴います。

裏書とその他の利用

巻物には注釈や補足が裏に書かれることがあり、これを裏書と呼びます。講談の世界では、忍術に関する記録としての利用など、特異な文化的価値も持っています。

巻物は、古代から現代にかけて多様な用途で利用され、今なお人々の関心を集める重要な文化的形態であると言えるでしょう。

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