コディアック打上げ基地

コディアック打上げ基地（現名称：PSCA）

アラスカ州のコディアック島北部に位置するこの施設は、商業目的のロケット打上げを主たる用途として整備された重要な宇宙港です。開設当初はコディアック打上げ基地（Kodiak Launch Complex, KLC）として広く知られていましたが、その名称は2015年4月に太平洋宇宙港複合施設-アラスカ（Pacific Spaceport Complex - Alaska）へと改められました。略称はPSCAです。

この施設は、アラスカ州によって設立された公共企業体であるアラスカエアロスペース社（Alaska Aerospace Corporation）が所有権を持ち、その運営管理の全てを担っています。同社はアラスカ州における宇宙関連産業の振興と、極軌道へのアクセスに優れたコディアック島の地理的利点を活かした商業打上げサービスの提供を目指しています。

施設とその能力

PSCAは、多様なロケットやミッションに対応するための先進的な設備群を備えています。主要な打上げ設備としては、第1発射台（Launch Pad 1, LP1）と第2発射台（Launch Pad 2, LP2）という二つの発射台が運用されています。これらの発射台からは、主に地球の極軌道を目指す小型から中型のペイロードを搭載したロケットが打ち上げられます。

打上げを遂行するための基幹設備として、施設内には高度な通信・追跡・管制能力を持つミッションコントロールセンターが設置されています。これにより、打上げ準備から軌道投入、ミッション完了に至るまで、全ての段階におけるロケットの挙動を監視し、正確な指揮を行うことが可能です。

また、打上げられる人工衛星などのペイロードは非常にデリケートな精密機器であるため、これらを塵や汚染から保護し、最終的な準備作業を行うためのクリーンルームが完備されています。さらに、大型のロケット機体やその構成要素を運び込み、組み立てや点検を行うための広大な建物として、高さが17階建てのビルに相当するロケット組み立て棟が設けられています。これは、様々なサイズのロケットに対応するための重要な施設です。

将来的な需要の増加と、より迅速な打上げ機会の提供を目指して、現在運用されている二つに加えて、三つ目の新しい発射台を建設する計画も進められています。これにより、施設の打上げ能力と柔軟性がさらに向上することが期待されています。

LP1の復旧と改修

主要な発射台の一つであるLP1に関しては、過去に大きな出来事がありました。2014年8月、アメリカ陸軍が進めていた極超音速滑空体（Advanced Hypersonic Weapon, AHW）の試験打上げがここから行われましたが、その際に事故が発生し、LP1の射点設備は甚大な損傷を受けました。この事故を受けて、LP1の復旧作業が長期にわたり行われることとなりました。

この修理と復旧のプロセスは単に元の状態に戻すだけでなく、設備の近代化と機能向上も同時に図られました。具体的には、損傷したLP1を、当時計画されていた新しい中型ロケットであるアテナ2Sの打上げに対応できるよう改修する作業が並行して実施されました。これらの復旧・改修作業は、2015年10月までに完了することを目指して進められていました。

名称変更について

既に触れた通り、この打上げ基地の正式名称は、2015年4月にコディアック打上げ基地（KLC）から太平洋宇宙港複合施設-アラスカ（PSCA）へと変更されました。この名称変更は、アラスカ州の広大な沿岸部に位置するという地理的な特性と、太平洋地域における宇宙活動の拠点としての役割をより明確に反映させる意図があったと考えられます。

PSCAとしての新たなスタートを切ったこの施設は、極地軌道へのアクセスにおける戦略的な優位性を持ち続けています。これは、地球観測衛星や通信衛星など、特定の軌道要件を持つミッションにとって非常に有利な立地です。今後も、アラスカエアロスペース社による運営のもと、商業宇宙産業の発展に貢献していくことが期待されています。

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