コト消費

コト消費とは

コト消費とは、一般的な物資の購入とは対照的に、『体験』にお金を使う消費行動のことを指します。英語では、experiential consumptionまたはintangible goods consumptionとして知られています。特に、非日常的でアクティブな体験が関わる経済活動を指すことが多く、2000年代初頭からこの概念が広がり始めました。背景には、多くの人々が日常生活に必要な物品を既に所有していること、インターネットの普及による価値観の多様化があるとされています。人々は、単なる物欲よりも心の充実を求める傾向が強まっています。

コト消費の具体例

その一例として、古くから存在する自己研鑽のための習い事が挙げられます。これに伴う体験には、キッザニア東京での子どもによる疑似職場体験や各種ワークショップが含まれます。さらに、自動車を購入した後にドライブに出かけることもコト消費の一形態として考えられます。また、体験ギフトとして他者に譲渡されることもあります。

コト消費における顕著な事例として、旅行が特に注目されます。観光農園での収穫体験や、観光牧場での乗馬がその一環です。最近では、社寺参拝ツアーにおいて、座禅や写経のようなオプションが組み込まれていることもあります。温泉入浴は以前から行われていましたが、現在は物見遊山や土産物購入だけでなく、実体験を主な目的とする体験型ツアーが増加しています。たとえば、マラソン大会やインストラクターによるヨガツアーなどがそれにあたります。

さらに、民宿の形態も進化しています。従来の民宿では宿泊と食事のみを提供していましたが、農家民宿では宿泊者自身が農作業や収穫、調理を行うという体験を提供しています。これにより、訪問者は単なる観光客ではなく、地元の文化に触れる機会を得ています。

外国人旅行者とコト消費

この体験型観光のトレンドは、訪日外国人旅行者の嗜好にも表れています。欧米人や中国人、アジア人は、日本の文化体験を求めているリピーターが増えています。これには、和装のコスプレのようなサブカルチャーも含まれます。結果として、コト消費はインバウンド消費においても大きな存在感を示しています。これを受けて、行政もこの傾向に目を向け、経済産業省は「コト消費空間づくり分担金」を設けたり、観光庁が体験型観光コンテンツのモデル事業を推進したりしています。

コト消費の進化

2010年代に入ると、コト消費の次の段階として「トキ消費」が注目されました。これは、特定の日時に行われるイベントやコンサートなど、限定的な『時』に対する消費を指します。コト消費が旅行に見られる場合、祭りなどに出向く行為がこれにあたります。また、2020年代には「イミ消費」という新たな概念も登場しました。これは社会貢献を重視した消費行動で、環境保全や地域貢献、文化の伝承がその例となります。たとえば、参加費を支払っての清掃活動や植樹活動などが挙げられます。

これらの新たな消費形態は、関連する商品を購入するモノ消費とも連動し、地域の経済循環に寄与することが期待されています。しかし、トキ消費は特定の日時や場所に人が集中するため、観光地の混雑といった課題を抱えることもあります。今後、こうした消費スタイルの進化が経済や文化に与える影響について注目していく必要があります。

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