コドリ川

コドリ川

コドリ川（グルジア語: კოდორი、アブハズ語: Кәыдры）は、ジョージアの事実上独立したアブハジア自治共和国を潤す重要な河川です。アブハジアにおいては、ブジピ川と並んで地域を代表する二大河川の一つに数えられています。

地理

この川は、アブハジア中東部に位置するマルツスヘナ・ゲンツヴィシ村の近辺で、二つの源流、すなわちグヴァンドラ川とサケニ川が合流することによって始まります。そこからおおむね南東方向へと流れ下り、約84キロメートルの道のりを経て、スフミから南東へ約20キロメートル離れたヴァルチャ村付近で広大な黒海へと注ぎ込みます。

水量の面では、コドリ川はアブハジアの河川の中で最も豊かです。年間の平均流量は毎秒123立方メートルに達し、その流域面積も2,030平方キロメートルと、地域内の河川としては最大規模を誇ります。一方、全長ではブジピ川に次ぐ第二位となります。コドリ川自体の長さは84キロメートルですが、最も長い源流であるグヴァンドラ川を起点とすると約110キロメートル、サケニ川を起点とした場合でも約105キロメートルにもなります。

地形と景観

コドリ川の上流域は、その独特な地形からコドリ渓谷として知られています。この地域は、過去の氷河活動によって深く浸食された痕跡が色濃く残り、特徴的なV字谷やU字谷が形成されています。グヴァンドラ川とサケニ川が合流する地点より下流では、谷の形状は箱型へと変化し、川沿いには広々とした沖積段丘が発達しています。特に、コドリ渓谷の入り口にあたるラタ村の下流付近には、「バガディの岩」と呼ばれる印象的な岩壁があり、地域の景勝地の一つとなっています。

支流と周辺環境

コドリ川に流れ込む支流のほとんどは、ロシアとの国境をなす雄大なコーカサス山脈の南斜面を水源としています。主要な支流としては、チハルタ川、ムランバ川、ジャンパリ川、アムツケリ川などが挙げられ、これらの支流から集められた水がコドリ川本流の水量を支えています。

また、コドリ川の渓谷は交通路としても利用されてきました。渓谷沿いには、コーカサス山脈のクルホリ峠を越えて、アブハジアの中心都市スフミとロシア連邦のチェルケスクを結ぶスフミ軍用大道路が走っており、地域を結ぶ重要な動脈となっています。

名称にまつわるエピソード

コドリ川の名は、意外な場所でもその名を聞くことがあります。かつてフィンランドで建造され、ソビエト連邦に引き渡された大型の航海練習船は、このコドリ川にちなんで「コドル」と命名されました。さらにこの船は、ジュール・ヴェルヌの有名な小説を原作としたソ連映画「グラント船長を探して」（1985年公開）において、物語の鍵となる「ダンカン」号として登場し、その存在を知られることとなりました。

コドリ川は、アブハジアの自然景観、水資源、そして歴史や文化にも深く関わる、この地域にとって欠かせない存在と言えるでしょう。

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