コナジラミ科

コナジラミ科（コナジラミ）

コナジラミ科は、カメムシ目に分類される昆虫のグループです。この科に属する昆虫は総称として「コナジラミ」と呼ばれています。世界には約17属、1550種類以上が確認されており、その多くが植物の汁を吸って生活しています。そのため、農業分野においては重要な害虫として扱われています。

形態と生態

コナジラミは、その一生を通じて独特な変態を遂げます。

幼虫

孵化直後の1齢幼虫は短い脚を持ち、葉の上をわずかに移動することができます。しかし、その後の2齢から4齢にかけては脚が退化し、植物の葉の裏などに体を固定して吸汁活動を行います。この固着した段階は、形態が大きく変化することからしばしば「蛹」と呼ばれることがありますが、厳密には蛹ではありません。この段階の幼虫はほとんど動かず、ひたすら植物からの吸汁を続けます。

成虫

4齢幼虫（あるいは「蛹」の段階）を経て羽化すると、脚と翅を持った成虫になります。成虫は体長が1ミリメートル程度と非常に小さく、比較的大きな2対の翅を持っています。全身が白い粉のような蝋質の物質で覆われているのが外見上の大きな特徴で、これが名前の由来ともなっています。

変態

コナジラミの変態は、一般的に不完全変態に分類されます。しかし、幼虫期の形態変化が非常に特殊であり、特に固着する段階を経ることから、「異変態」と呼ばれることもあります。

天敵

自然界には、コナジラミを捕食する様々な天敵が存在します。代表的なものとしては、寄生蜂であるツヤコバチ類、肉食性のテントウムシ類、そしてクサカゲロウの幼虫などが挙げられます。これらの天敵の一部は、害虫駆除のための生物農薬として積極的に利用されています。

農業害虫としての影響

コナジラミ科には、多くの農業害虫が含まれます。特に日本では、タバココナジラミ（Bemisia tabaci）、初めはタバココナジラミの一種とされたシルバーリーフコナジラミ（Bemisia argentifolii）、そしてオンシツコナジラミ（Trialeurodes vaporariorum）などが、様々な作物に深刻な被害をもたらしており、世界的な問題ともなっています。熱帯地域では、さらに多くの作物で大きな被害が発生しています。

コナジラミによる被害は主に二つの側面があります。

1. 直接的な吸汁被害: 植物から栄養を吸い取ることで、葉が変色したり、生育が悪くなったり、ひどい場合には株全体が枯死することもあります。また、コナジラミの排泄物である甘露が植物の表面に付着し、すす病を誘発して光合成を阻害することもあります。
2. ウイルスの媒介: コナジラミは、ジェミニウイルスをはじめとする多くの植物ウイルスを媒介することが知られています。ウイルスに感染した植物は回復が難しく、収量や品質に甚大な被害をもたらします。コナジラミ自身だけでなく、彼らが媒介するウイルスが広範囲の作物に伝播する点が、特に重大な問題となっています。

防除対策

コナジラミの防除には様々な方法が用いられています。

化学的防除としては、アセタミプリドなどのネオニコチノイド系殺虫剤が主に使われます。しかし、コナジラミは薬剤に対する抵抗性を獲得しやすい性質があるため、同じ薬剤を繰り返し使用することは推奨されません。抵抗性の発達を防ぐため、異なる系統の薬剤をローテーションで使用するなどの工夫が必要です。

薬剤だけに頼らない対策として、近年では「総合的病害虫管理（IPM）」が重要視されています。これは、複数の防除手段を組み合わせることで、効果的にコナジラミの密度を抑えつつ、薬剤への依存度を減らすことを目指すものです。

具体的なIPMの手法としては、以下のようなものが挙げられます。

物理的防除: 黄色などの粘着シートを設置して成虫を捕獲する、温室などの施設に防虫ネットを張って外部からの侵入を防ぐなど。
生物的防除: 先述したツヤコバチやテントウムシなどの天敵を利用した生物農薬を使用する。
* 耕種的防除: 適切な栽培管理を行い植物を健康に保つ、被害残渣を適切に処理するなど。

また、特定の植物がコナジラミを遠ざける効果を持つという報告もあります。例えば、マリーゴールドを近くに植えることがコナジラミの忌避に繋がるといわれています。

コナジラミは繁殖力が非常に高く、一度発生すると急速に広がるため、早期発見と適切な対策の実施が被害を最小限に抑える鍵となります。

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関連項目

農業害虫、シラミ

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