コバルトガラス

コバルトガラスとスマルト：青の輝きを彩る歴史

コバルトガラスは、酸化コバルトなどのコバルト化合物を含むことで美しい青色を呈するガラスです。500～700ナノメートルの波長の光を吸収する特性を持つため、ナトリウムの炎色反応を観察する際のフィルターとしても利用されます。その鮮やかな青色は、ガラス工芸などにも広く用いられています。

一方、スマルト（Smalt）は、酸化コバルトとカリウムを添加した石英ガラスで、顔料や絵具として古くから親しまれてきました。化学式はSiO₂・K₂O・CoOで表されます。カラーインデックスではPigment Blue 32、PB32、PB74として知られ、ルネサンス期以降、特に16～17世紀に盛んに使用されました。

スマルトの変色と歴史

スマルトは、乾性油と混ぜると変色しやすいという特徴があります。これは、スマルトに限らず他の顔料でも起こりうる現象ですが、スマルトでは特に顕著です。この性質は当時から認識されており、絵画への使用には注意が必要でした。

スマルトの歴史は古く、紀元前2000年頃の古代メソポタミアでは、アルミン酸コバルトガラスが顔料として使用されていた痕跡が見つかっています。その後、約5世紀後にはエジプトの陶器の着色に使われ、エーゲ海地域にも広まりました。

絵画では時間の経過とともに色が薄れてしまうため、現代では使用されませんが、陶器の釉薬として用いられた場合は、色が長持ちする特性があります。そのため、イタリア・ルネサンス期のマヨリカ焼き、オランダのデルフト陶器、中国の明・元時代の染付など、様々な地域で長い期間にわたって使用されてきました。

中国では、コバルトガラスは周王朝（紀元前1122～221年）頃に発見され、スマルト釉薬は唐代以降に使用されるようになりました。また、13世紀頃からは中央アジアでも顔料として使われており、カラ・ホト（タングート）では、11～13世紀のものとみられるスマルトを含む泥絵の破片が発見されています。

ヨーロッパ絵画では、15～17世紀にスマルトが広く用いられていましたが、現在では多くの作品で色が抜けてしまっています。ヨーロッパにおけるスマルトの製造法の発明は、1540～1560年頃のボヘミア人ガラス工Christoph Schürerによるものと考えられていますが、1455年頃のディルク・ボウツの作品『The Entombment』にスマルトが使用されていることから、少なくとも1世紀以上前から存在していたことがわかります。

コバルトガラスとスマルトの多様な用途

コバルトガラスとスマルトは、その美しい青色と特性から、時代や地域を超えて様々な用途に使用されてきました。炎色反応の観察、ガラス工芸、絵画、陶器の釉薬など、その用途は多岐に渡り、それぞれの時代や文化に彩りを添えてきました。現在でも、その美しい青色は人々を魅了し続けています。これらの歴史と文化的な側面を理解することで、コバルトガラスとスマルトの持つ魅力をより深く味わうことができるでしょう。

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