コバール

コバールは、鉄をベースにニッケルとコバルトを添加した合金で、その組成は重量パーセントでニッケル約29%、コバルト約17%、シリコン約0.2%、マンガン約0.3%、そして残りが鉄となっています。この特筆すべき点は、常温付近での熱膨張率が極めて低いことです。

熱膨張率の低さ

金属は一般的に温度が上昇すると膨張しますが、コバールは他の金属と比較して非常に膨張しにくい性質を持っています。その熱膨張率は硬質ガラスに近いため、コバールと硬質ガラスを接合する際に、温度変化による接合部のひずみや破損を抑えることが可能です。この特性を活かし、コバールは硬質ガラスとの封着用途に広く用いられてきました。

応用分野

コバールの主な応用分野としては、以下のものが挙げられます。

硬質ガラス封着用: 真空管やランプ、電子部品など、気密性が要求される製品において、コバールは硬質ガラスとの封着材料として不可欠です。コバールを用いることで、温度変化に対する信頼性の高い接合が実現します。

ICリードフレーム: 集積回路（IC）のリードフレームにもコバールが使用されます。リードフレームはICチップと外部回路を接続する役割を担っており、高い熱膨張率を持つ材料では、温度変化によって接合部にストレスが生じる可能性があります。コバールは、熱膨張率が低いことから、ICの信頼性向上に貢献しています。

特性のまとめ

低い熱膨張率: 金属の中でも特に低い熱膨張率を持ち、硬質ガラスに近い。これにより、異種材料との接合において熱によるストレスを軽減できる。

優れた加工性: コバールは比較的加工が容易で、様々な形状に成形できる。

高い信頼性: 熱膨張率の低さから、温度変化に強い接合が可能になり、製品の信頼性向上に貢献する。

注意点

コバールは優れた特性を持つ一方で、他の金属と比較してコストが高いという側面もあります。そのため、用途に応じて適切な材料を選択することが重要です。

関連事項

コバールの類似材料として、インバーという合金も知られています。インバーも熱膨張率が低い金属ですが、コバールとは異なる組成と特性を持っています。コバールは、その優れた熱特性により、精密機器や電子部品の信頼性向上に欠かせない材料として、幅広く活用されています。

参考文献

池田豊「ガラスと金属の接着機構 (I)」『材料』第17巻第180号、日本材料学会、1968年、783-792頁、doi:10.2472/jsms.17.783、ISSN 0514-5163、NAID 110002294400。

関連項目

* インバー

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