コブミカン

コブミカン：東南アジア料理に欠かせない柑橘類

コブミカン（学名: Citrus hystrix）は、タイやマレーシアを原産とする柑橘の一種です。別名として、スワンギ、プルット、そして英語ではカフィアライムと呼ばれますが、ライムとは異なる種です。その強い芳香から、東南アジア諸国の料理において重要なハーブとして広く利用されています。多くの家庭で、庭先に植栽されているほど身近な存在です。

特徴：独特の香り、棘のある枝、そして翼のある葉

コブミカンは、緑色の小さな果実をつけ、枝には棘があります。葉は、多くの柑橘類と同様に葉柄に翼がありますが、葉柄と葉身部分の大きさの差が小さいため、葉全体が重なり合ったような独特の形状をしています。この葉は強い芳香を放ち、料理に独特の風味を与えます。果実はゴツゴツとした外観で、サイズは約4cmと小ぶりです。

栽培：鉢植えも可能な、比較的育てやすい柑橘類

コブミカンは鉢植えでの栽培も可能です。日本では関東以西であれば、霜や雪に注意すれば露地栽培も可能です。ただし、東南アジア諸国から生の果実や枝を日本国内に持ち込むことは、植物防疫上の理由から禁止されています。

多様な呼び名：地域によって異なるコブミカンの名称

コブミカンは、地域によって様々な呼び名を持っています。ミャンマーでは「シャウッ・ヌ」、カンボジアでは「クローイ・サウイ」、中国では「箭葉橙」や「馬蜂柑」など、国や地域によって異なる名称で呼ばれています。マレーシアでは「リマウ・プルッ」、インドネシアでは「ジェルク・プルット」や「ジェルク・リモ」、フィリピンでは「スワンギ」、ベトナムでは「チャプ」、スリランカでは「kahpiri dehi」など、多様な呼び名が存在します。英語では「カフィア・ライム」として広く知られていますが、この呼び名は人種差別的なニュアンスを含むため、「マクルード・ライム」という呼び方が推奨されています。

利用：料理、医療、そして飲料など幅広い用途

料理への利用

コブミカンの葉は、その砂時計のような形状と爽やかな香りを活かし、様々な料理に使用されます。特に、タイ、ラオス、カンボジア料理では、クルウングと呼ばれるペーストの材料として欠かせません。トムヤムクンやグリーンカレーなど、代表的なタイ料理にも用いられ、インドネシア料理ではサユール・アサムなどのスープ料理や、鶏肉や魚料理の風味付けとして使用されます。マレー料理やミャンマー料理にも利用されています。生のまま、乾燥させたもの、冷凍したものなど、様々な状態で使用されます。果皮は、レユニオン島やマダガスカル島などで、クレオール料理やお酒の風味付けに用いられます。

医療への利用

コブミカンの果汁や果皮は、インドネシアの伝統医療で使用され、「ジェルク・オバット（薬のミカン）」と呼ばれることもあります。果皮から抽出される油には、強い殺虫効果があると言われています。さらに、近年の研究では、コブミカンの葉が、発がんリスクを高める可能性のある複素環アミン類などの変異原物質に対する強い抗変異原性を示すことが明らかになり、注目を集めています。

その他の利用

コブミカンは、料理や医療の分野以外にも、様々な用途で利用されています。映画『幸せのレシピ』では、隠し味として使用され、ウォッカやビールなど、アルコール飲料の風味付けにも用いられています。

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