コペンハーゲン (イギリスのテレビ映画)

2002年イギリスTV映画『コペンハーゲン』：歴史的邂逅と未解明の謎

2002年、イギリスで製作されたテレビ映画『コペンハーゲン』(Copenhagen)は、20世紀物理学史における重要な出来事を題材にした作品です。舞台は1941年のコペンハーゲン。主演は、ダニエル・クレイグとスティーブン・レイという豪華キャスト陣を迎え、彼らの演技によって、歴史的場面が鮮やかに再現されています。

この映画の原作は、1998年にトニー賞を受賞した、マイケル・フレインによる同名舞台劇です。舞台劇は、わずか3人の俳優のみで演じられる構成でしたが、映画版では、その緊迫感と複雑な人間関係を見事に映像化することに成功しています。

映画の中心は、量子力学の父と呼ばれるニールス・ボーアと、彼の教え子であり、後にナチス・ドイツの原子爆弾開発に関与したとされるヴェルナー・ハイゼンベルクの出会いです。彼らは、物理学、戦争、友情など、多岐にわたるテーマについて議論を交わします。

脚本と監督を務めたのは、ハワード・デイヴィス。彼は、原作の複雑なテーマを巧みに映像に落とし込み、観る者の心を掴むスリリングなドラマを作り上げました。特に、ボーア役を演じたスティーブン・レイと、ハイゼンベルク役を演じたダニエル・クレイグの演技は、登場人物の葛藤や心理的な揺れ動きを繊細に表現しており、高く評価されています。また、ボーアの妻、マルグレーテ・ボーアを演じたフランチェスカ・アニスも、物語に深みを与えています。

映画の製作は、BBC FourのBBCフィクションラブとKCETが共同で行い、ロンドンでの撮影が行われました。2002年9月26日にBBC Fourで初放送され、その後、アメリカ合衆国ではPBSで放送されました。放送に際しては、フレインによるプロローグと、物理学者ミチオ・カクによるエピローグ、そして歴史的事項に関するドキュメンタリーが加えられていました。

しかし、この映画は、事前宣伝にもかかわらず、視聴者数を伸ばすことができませんでした。視聴者数は約1万8千人にとどまり、低視聴率という結果に終わっています。その理由として、原作戯曲からの大幅なカットが挙げられるでしょう。

それでも、この映画版『コペンハーゲン』は、会話劇としての完成度の高さで評価されています。緊迫した会話は、役者の優れた演技と、それを邪魔しない演出によって、高いリアリティを獲得しています。

一方で、批評家からは原作舞台版には及ばないという意見も出ています。ジャーナリストの佐藤友紀氏は、舞台版の完成度には遠く及ばないと評し、ラジオ版でボーアを演じたサイモン・ラッセル・ビール、ハイゼンベルクを演じたベネディクト・カンバーバッチ、マルグレーテを演じたグレタ・スカッキらによる再映像化を期待する声も上がっています。

現在、日本語版DVDは発売されていませんが、欧州版と北米版のDVDは発売されています。この歴史的邂逅と未解明の謎に包まれた物語は、今もなお、人々の関心を集め続けています。

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