コマンドキー

コマンドキー（Command key、略称 Cmd）は、Appleが製造するMac、iPad、Newtonなどのハードウェアに付属するキーボードに搭載されている特殊な機能を持つ修飾キーです。その歴史は古く、1980年に登場したApple IIIで初めて採用されました。

このキーは、キーボードの最下段、通常はスペースキーの左右に配置されており、親指で自然に押せる位置にあります。他のキーと組み合わせて同時に押すことで、様々なシステムやアプリケーションに対するコマンド（命令）を実行できるのが最大の特徴です。特にClassic Mac OSやmacOSといったAppleのデスクトップOSにおいては、操作体系の中心的な役割を担っており、快適な利用に不可欠な存在と言えます。

1984年に初代Macが登場して以降、コマンドキーのキートップには「⌘」（コマンドマーク）が刻印されています。一時期はAppleロゴマークも併記されていましたが、2007年8月7日に発表された新しいキーボードからはAppleロゴの刻印は削除されました。これは、メニューバーなどでAppleロゴがコマンドキーの表示として多用されることに対し、創業者のスティーブ・ジョブズ氏がロゴの濫用であると感じ、別のマークを採用するように指示したという経緯に由来します。ちなみに、過去にはNeXT社のハードウェアにもコマンドキーが搭載されており、「Command」と文字が刻印され、スペースバーの下に配置されていました。

代表的な使用例（ショートカットキー）

コマンドキーは、他のキーと組み合わせて多くのアプリケーションで共通して利用できる代表的なショートカットキーを提供します。例えば、以下のような組み合わせが広く使われています。

⌘ + A: 全てを選択（Select All）
⌘ + C: コピー（Copy）
⌘ + V: ペースト（Vaste / Paste）
⌘ + X: カット（X は切断を連想させる）
⌘ + Z: 直前の操作を取り消し（Undo。最後に近いアルファベット Z が選ばれたとされる）
⌘ + S: 保存（Save）
⌘ + F: 検索・見つける（Find）
⌘ + P: プリント（Print）

これらのショートカットは、多くの場合、実行される機能を表す英単語の頭文字が選ばれています。これは、特定の機能を呼び出すためのシンプルで覚えやすい体系として設計された結果です。なお、これらの用法はコンピュータに動作させる機能を表す英語の単語の頭文字が選択されていて、一般的な制御文字の動作とは無関係であることに留意が必要です。

特殊な選択方法

MacのFinderなどでファイルやフォルダを選択する際にもコマンドキーは役立ちます。コマンドキーを押しながら個々の項目をクリックすることで、連続していない複数の項目を任意に選択できます。これは、複数の項目をまとめて範囲指定するシフトキーによる選択とは異なる、細かい選択が可能な方法です。

記号「⌘」の由来

コマンドキーに刻印されている「⌘」マークは、「ループスクエア」や「ゴルディアンノット」とも呼ばれるシンボルです。初代Macの開発に携わったグラフィックデザイナー、スーザン・ケア氏が、記号辞典を調べている際に、北欧の史跡などを案内する交通標識に使われていたシンボルを見出して採用したものです。前述の通り、開発当初はAppleロゴマークが使われていましたが、メニューバーにロゴが並ぶ様子を見たスティーブ・ジョブズ氏が、自社ロゴの過剰な使用だと感じ、「Appleのロゴマークをいたずらに使うのではなく、何か特別な記号を使うように」と指示したことが、このユニークなマークが採用されるきっかけとなりました。

PC用キーボードでの利用と他OSとの比較

MacにWindows用キーボードを接続して使用する場合、通常、Windowsキーがコマンドキーとして機能するようにシステムが自動的に割り当てます。もしWindowsキーが搭載されていないなど、キー配列に不都合がある場合は、Mac OS X v10.4 Tiger以降であれば、OSの設定で他の修飾キー（例えばAltキーなど）との割り当てを変更して利用することが可能です。

Windows系OSでは、Macのコマンドキーに相当する役割の多くをコントロールキー（Ctrlキー）が担っています。そのため、WindowsからMacへ移行したユーザーは、ショートカットキーの組み合わせの違いに慣れるまで少し時間が必要かもしれません。例えば、コピー＆ペーストはWindowsでは Ctrl+C/V ですが、Macでは ⌘+C/V です。

一方、Macのコントロールキーは、Windowsのそれとは機能が異なります。Macのコントロールキーは、Unix系ソフトウェアの操作、テキストカーソルの詳細な移動（行頭や行末への移動など）、二つボタンマウスの右クリック操作のエミュレーション（Control+クリック）、日本語入力システム（IME）の操作など、多岐にわたる機能に利用されます。しかし、Windowsのコントロールキーには、これらの機能の多くは割り当てられていません。

コマンドキーは、その独自の機能と歴史、そしてユニークなシンボルマークによって、Apple製品の操作性を象徴する重要なキーの一つと言えるでしょう。

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