Finder

Finder：macOSの中核をなすファイル管理システム

Finderは、macOSのファイル管理を担うだけでなく、デスクトップ環境を提供するグラフィカルシェルです。Macintoshのデスクトップメタファの中心として、ファイル操作からシステムとの統合まで、多岐にわたる役割を果たしています。その直感的な操作性と、コンピュータの歴史に与えた影響は計り知れません。

概要

Finderは、Macintoshの使いやすさの根幹をなす存在です。ファイル管理という基本的な機能に加え、機能拡張の制御やインタフェースの雛形としての役割も担っています。まさにMacintoshの「顔」であり、象徴と言えるでしょう。

WindowsにおけるWindows Explorerに相当しますが、Finderはウェブブラウザとの統合は行わず、ファイル管理に特化しています。現代のウィンドウGUIシステムの多くはFinderの影響を受けており、その影響力は非常に大きいと言えるでしょう。

特長

デスクトップメタファ

Finderの最大の特徴は、デスクトップメタファの採用です。ファイルやディレクトリを、現実世界のフォルダや書類のようなアイコンで表現することで、ユーザーは直感的に操作を理解できます。このメタファにより、コンピュータ操作が身近なものとなり、直感的な操作が可能になりました。

操作性

Finderの操作は、メニュー選択、ダブルクリック、ドラッグ＆ドロップが基本です。ファイル名の入力以外は、キーボードを使わずに操作できます。ソフトウェアキーボードも利用可能です。

基本操作は以下の通りです。

シングルクリック: 項目の選択、選択解除
ダブルクリック: 項目のオープン（アプリケーション起動、フォルダ表示、書類の関連アプリ起動）
ドラッグ: 領域内の項目を選択
ドラッグ＆ドロップ: 項目の移動（コピーになる場合もあり）

また、キーボードショートカットなど、様々な操作方法が用意されており、ユーザーのレベルに応じて使い分けが可能です。例えば、項目のオープンには以下のような方法があります。

ダブルクリック
メニューから「開く」を選択
ショートカット「Command + O」
ショートカット「Command + ↓」

コンテクストメニューや音声認識も利用可能です。Finderの使いやすさには、人間工学に基づいた細やかな調整が貢献しています。例えば、ダブルクリック時のマウスのわずかな動きは補正され、ファイル名部分のクリック後のポインタ移動で、すぐに編集モードに移行するなど、ユーザーが意識しないレベルで、多くの配慮がなされています。

アイコン

デスクトップメタファにおいて重要なアイコンも、Finderと共に進化してきました。

初期: 白黒2値、32x32ピクセル。シンプルで直感的なデザイン。デザイナーのスーザン・ケアが担当しました。
System 7: 256色カラー対応。
Mac OS 8.5: 24ビットフルカラー＋8ビットアルファチャンネル対応。透明度のある表現力豊かなアイコンが利用可能になりました。
macOS: 128x128ピクセルに拡大、写実的なデザインに変更。その後、512x512ピクセル、Retina Display対応の1024x1024ピクセルのアイコンが採用されました。

アイコンは、ユーザーが好きな画像に変更することも可能です（カスタムアイコン）。また、初期のMac OSでは、大きな画像を分割して複数のアイコンとして利用するテクニックも存在しました。

アイコンのデータは、Classic Mac OSではリソースフォークに、macOSでは.icnsファイルに格納されます。複数のサイズのアイコンを格納し、表示サイズに応じて最適なものが選択されます。

クリエータとファイルタイプ

Classic Mac OSでは、クリエータコードとファイルタイプによって、書類とアプリケーションが関連付けられていました。

クリエータ: アプリケーションを識別するコード。固有のコードが割り当てられていました（例：SimpleText→'ttxt'）。
ファイルタイプ: ファイルの種類を表すコード。アプリケーションに依存しない（例：アプリケーション→'APPL'、テキスト書類→'TEXT'）。

この仕組みにより、書類を開くと、通常はその書類を作成したアプリケーションが起動します。また、アプリケーションは自分の開けるファイルタイプのリストを持っており、開けるファイルタイプであれば、アプリケーションのアイコンにドラッグ＆ドロップすることで、そのアプリケーションが起動します。

この仕組みは、Windowsの拡張子と比較すると、その利点が明確になります。拡張子はアプリケーションごとに異なる場合があり、同じファイル形式でも拡張子が異なる場合は、開けるアプリケーションが不明確になる場合があります。また、拡張子はファイル名の一部であるため、ユーザーが誤って削除・変更してしまう可能性もあります。

一方、クリエータコードとファイルタイプは、ResEditなどのツールを使わなければ閲覧・変更できないため、より安全です。macOSでは、他のオペレーティングシステムとの互換性のために拡張子も使用するようになりました。

リソースとパッケージとバンドル

Mac OSでは、リソースフォークと呼ばれるファイル構造が採用されています。アイコンやメニューなどのGUI要素、実行コード、文字列などのリソースを格納することができます。

この仕組みにより、アプリケーション本体を再コンパイルすることなく、表示文字列の翻訳などの変更が可能になります。また、アプリケーションの起動に必要なファイルを1つのファイルとして扱えるため、インストーラーが不要な場合が多く、ドラッグ＆ドロップだけで手軽にインストールできます。

Mac OS 9では、パッケージ機能が導入され、複数のファイルやフォルダを1つのファイルのように見せかけることができるようになりました。例えば、アプリケーションとその関連ファイルを1つのパッケージとして扱うことができます。

macOSでは、バンドルという仕組みが導入されました。これは、リソースフォークの代わりに、GUI要素や画像、文字列などを、それぞれ独立したファイルとしてアプリケーションバンドル内に格納するものです。これにより、他のオペレーティングシステムとのデータ交換が容易になり、アプリケーションで使用するデータが肥大化したことに対応できます。

バンドル構造により、アプリケーションのリソースを言語ごとに分割して格納できます。macOSでは、文字列や画像、GUI要素の定義は、各言語のフォルダに格納され、システムの言語設定に応じて必要な言語リソースがロードされます。これにより、アプリケーションの多言語化が容易になっています。

開発者にとってのFinder

Classic Mac OSにおけるFinderは、Macintosh向けアプリケーションのユーザーインターフェースを規定する、Appleのヒューマンインターフェースガイドラインの実動するサンプルとして見られていました。開発者にとって、FinderはMacintoshユーザーインターフェースの基準でした。Finderのデザインや挙動が、多くのソフトウェアの手本となり、Macintoshの使いやすさにつながっています。

歴史

Classic Mac OSにおけるFinder

オリジナルのFinderは、ブルース・ホーンとスティーブ・キャップスによって開発されました。Finderはシステムの中核と不可分な存在であり、ファイルシステム/ファイルブラウザという区別は、ユーザーには意識されていませんでした。

初期のMacintoshでは、MFSというフォルダをサポートしないファイルシステムが使われていましたが、Finderがフォルダ構造をエミュレートしていました。後にHFSが実装されましたが、ユーザーにとって使い勝手は変わりませんでした。

System 1.0から4.1

System 6

System 7

カラー化
エイリアス：シンボリックリンクと異なり、フォルダを移動しても機能。
バルーンヘルプ
ドラッグ＆ドロップ
発行と引用

Mac OS 8

大幅な進化を遂げたバージョンです。マルチスレッド化が行われ、ファイルのコピーとゴミ箱を空にするといった並行作業が可能になりました。システム全体でのプラチナアピアランス採用に伴い、アイコンデザインが立体的なものに変更されるなど、全面的なデザイン変更が行われました。

主な新機能

フォルダナビゲーション
ポップアップウィンドウ
Finderの設定
シンプルFinder
ボタン表示
コンテクストメニュー
相対日時

Mac OS 8.5

フォルダアクション
32ビットアイコン
ナビゲーションサービス
オートルーティングフォルダ
プロキシアイコン

Mac OS 9

暗号化
パッケージ

macOSのFinder

macOSでは、FinderはCarbonで完全に再設計されました。以前のFinderとは異なる部分が多く見られます。特に、初期のmacOSのFinderは、以前のFinderとは別物でした。しかし、その後、多くの機能（スプリングフォルダ、ラベル機能など）が復活し、細かな使い勝手が改善されました。

その後、インタフェース面では、サイドバーやSpotlightの検索機能が統合されるなど、徐々に変化を遂げています。

以前はOSの根幹であったFinderは、macOSではファイルブラウザ/メディアブラウザとしての役割を担う1つのアプリケーションとなりました。これは、リソースの抽象性・仮想性が高まったためです。Finderに統合された機能（SpotlightやQuick Look）は、他のアプリケーションからも利用できます。

以前のFinderでは、「1フォルダ-1ウィンドウ」の原則がありましたが、macOSでは廃止されました。代わりに、「カラム表示」が導入され、1つのウィンドウ内でフォルダ階層を辿ることが可能になりました。

Mac OS X Public Beta

Mac OS X v10.0 (Cheetah)

Mac OS X v10.1 (Puma)

ホイールマウスへの対応
カラム表示幅調整

Mac OS X v10.2 Jaguar

スプリングフォルダ／スプリングウィンドウ
ローカライズドフォルダ
シンプルFinder
「情報を見る」ウィンドウ

Mac OS X v10.3 Panther

インタフェースの更新
サイドバー
アクションボタン
圧縮・解凍機能の統合
ラベル機能の復活
検索機能の強化
セキュリティ機能の強化

Mac OS X v10.4 Tiger

Spotlightの統合
ディスク作成フォルダ
画像のスライドショー

Mac OS X v10.5 Leopard

サイドバーの強化
ファイル共有機能の強化
Spotlightのネットワーク統合
どこでもMy Mac
Quick Look
Cover Flow
内容を表示できるアイコン

Mac OS X v10.6 Snow Leopard

Cocoa化
64ビット化

Mac OS X Lion

Mission Control

OS X Mountain Lion

ダウンロードとファイルコピーの進捗ゲージ
暗号化
共有ボタン
サイドバーのカスタマイズ
クイックルック機能強化

OS X Mavericks

タブ
フルスクリーン

OS X Yosemite

iCloud Drive

OS X El Capitan

macOS Sierra

macOS High Sierra

macOS Mojave

macOS Catalina

macOS Big Sur

macOS Monterey

macOS Ventura

macOS Sonoma

macOS Sequoia

脚注

注釈

出典

関連項目

ファイル (Apple)

外部リンク

Mac ハンドブック：Finder
Apple - Macを使いこなそう - Macの基本

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