コミケ幕張メッセ追放事件

コミケ幕張メッセ追放事件とは

1991年8月、千葉県幕張メッセで開催予定だったコミックマーケット40（コミケ40）は、開催直前に会場側から使用中止を通告されるという、前代未聞の事態に見舞われました。この事件は「コミケ幕張追放事件」や「コミケ幕張中止事件」とも呼ばれ、コミックマーケットが有明に移転するまでの歴史の中で、最大の存続危機とされる出来事です。

事件の経緯

幕張メッセへの移転

1975年に始まったコミケは、参加者数の増加に伴い、従来の会場であった東京国際見本市会場ではキャパシティが限界に達していました。1988年冬のコミケでは会場を確保できず、開催延期を余儀なくされる事態となり、より大規模な会場が必要となっていました。そこで、1989年冬からは、当時国内最大級のイベント会場であった幕張メッセに会場を移転しました。

幕張メッセからの追放

しかし、1989年の宮崎勤事件によるオタクバッシングや、1990年の有害コミック騒動の影響で、同人誌に対する社会的な風当たりは強まっていました。1991年2月には、同人誌を販売していた書店が猥褻図画販売目的所持で摘発され、美少女系同人誌サークルも摘発されるなど、同人誌業界に対する締め付けが強まっていました。

そんな中、幕張メッセを管轄する警察署に届けられた拾得物の中に、無修正の同人誌が含まれていました。この同人誌を問題視した警察は、コミックマーケット準備会（準備会）と幕張メッセに事情聴取を行いました。幕張メッセは、社会的認知度の高いイベントへの貸し出しを優先する方針をとっていたため、この事情聴取を受けて、既に開催告知やサークル申込が済んでいたにもかかわらず、コミケの開催を拒否しました。

開催場所の変更とその後

突然の会場使用拒否に対し、準備会は急遽、旧会場である晴海の東京国際見本市会場に会場使用を依頼しました。もし晴海会場が使用できなかった場合、コミケは開催の見通しが立たないまま終了する可能性もありました。幸いにも晴海会場は、見本誌の内容チェックや同人誌印刷所への協力要請などを条件に開催を許可し、コミケ40は予定通り開催されました。しかしこの事件をきっかけに、千葉県では青少年健全育成条例が改正され、同人誌即売会は事実上開催不能となりました。

1994年には、幕張メッセで開催予定だったコミックシティが、警察からの注意を受けて直前で中止となる事件も起きました。その後、コミックシティは自主規制を設けましたが、同人誌業界内外からの批判を浴び、撤回しています。

コミケは、晴海に戻ってから4年間開催され、その後東京ビッグサイトが開場すると、そこが新たな開催地として定着しました。メディアでの報道や開催の定着によって、同人誌即売会への風当たりも弱まり、1997年頃から幕張メッセでも同人誌即売会が再び開催されるようになりました。

2015年には、コミケットスペシャル6が幕張メッセで開催されるなど、過去の経緯を乗り越え、幕張メッセとコミケの関係は修復されています。

コミケ幕張追放事件が残した教訓

この事件は、同人誌文化が社会的に認められるまでに多くの困難があったことを示しています。また、社会情勢や偏見が、文化活動に大きな影響を与える可能性を示唆する出来事とも言えるでしょう。コミケはこの事件を乗り越え、現在では日本を代表する文化イベントとして定着しており、この事件は、コミケの歴史を語る上で重要な教訓として語り継がれています。

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