コムストック・ロード

コムストック・ロードの発見と発展

コムストック・ロードは、アメリカ合衆国ネバダ州のバージニア山脈東斜面、現在のバージニアシティ地下に位置する、最初期の大規模な銀鉱床です。1859年にその発見が公表されると、アメリカ全土から探鉱者が殺到し、一攫千金を求めてこの地に集まりました。この鉱床は、莫大な富を生み出しただけでなく、鉱業技術の発展にも大きく貢献しました。

銀の発見の経緯

1858年、ネバダ（当時はユタ準州西部）での銀の発見は、カリフォルニアの金鉱発見以来の大きな興奮を呼びました。ジャーナリストのダン・デ・クイルは、「銀の発見は、広大な地域に価値を与え、多くの雇用を生み出した点で、カリフォルニアの金発見以上の功績がある」と記しました。

この地域では、1850年春にモルモン教徒の移民集団がゴールド・キャニオンで金を発見していました。しかし彼らはカリフォルニアでのさらなる発見を期待し、雪解けを待って山を越えて行きました。その後も移民がこのキャニオンに滞在し、鉱山で働きましたが、夏の終わりには水が涸れ、カリフォルニアへ向かいました。

1852年から1853年にかけて、約200人がこのキャニオンの砂利土手で働いていましたが、本格的な鉱脈調査は行われていませんでした。ゴールド・キャニオンの金は石英脈から来ており、その鉱脈は現在のシルバーシティやゴールドヒルの近くにありました。

1857年、イーサン・アレン・グロシュとホウジーア・バロウ・グロシュ兄弟が鉱脈を発見したとされています。しかし、ホウジーアは事故で死亡、イーサン・アレンも資金調達のためにカリフォルニアに向かう途中で命を落としました。グロシュ兄弟の小屋を管理していたヘンリー・トンプキンス・ペイジ・コムストックが、兄弟の死後にその土地と鉱脈を自分のものと主張しました。

コムストック・ロードの発見者たち

ゴールドヒルの鉱床は、ジェイムズ・フィンニー、ジョン・ビショップ、アレック・ヘンダーソン、ジャック・ヨーントの4人によって発見されました。彼らの発見はコムストック・ロードの一部でしたが、主鉱脈ではありませんでした。その後、ピーター・オライリーとパトリック・マクローリンが、渓谷の奥に進み、水流の近くで探査中に大きな成果を上げました。穴の底に金が層になっているのを見つけ、これがアメリカにおける銀鉱業の始まりとなりました。

この発見を公表すると、ヘンリー・T・P・コムストックが自らの土地であると主張し、オライリーとマクローリンに利益を分け与えるように要求しました。コムストック・ロードの位置については、地理的な定義は曖昧で、金鉱脈は「ウォーカー川の東支流」、銀鉱脈は「シエラネバダ山脈の東斜面半ば」とされていました。

発見者の運命

鉱山を発見した坑夫たちは、鉱脈の大きさを理解していませんでした。彼らのほとんどは、他の金鉱脈と同様に小さな鉱脈だと考えていました。しかし、鉱脈の潜在的な価値は非常に大きく、多くの労働と投資が必要でした。

パトリック・マクローリンは権利を3,500ドルで売却し、その後は雑役夫として亡くなりました。コムストックの共同経営者ペンロッドは、権利を8,500ドルで売却しました。ピーター・オライリーは権利を保持しましたが、最終的に約4万ドルで売却し、後に精神病院で亡くなりました。コムストックは他の権利も取得しましたが、事業に失敗し、自殺しました。

初期の採鉱と精錬

当初は露天掘りでしたが、すぐに地下にトンネルを掘る必要がありました。コムストック・ロードの鉱脈は厚さが数百フィートに及ぶものが多く、柔らかく掘りやすかった一方、落盤の危険性も高く、1,000メートル以上の深さまで掘り進められました。

落盤問題は、フィリプ・ダイデシャイマーが発明したスクエアセット坑くいの方法で解決されました。これは、一辺が1.8メートルの立方体に組まれた木材で坑道を支える方法でした。

湧水も大きな問題で、強力なポンプが必要とされました。さらに、深くなるにつれて熱湯も湧き出し、坑道内での労働は困難を極めました。換気装置も必要となり、圧縮空気を利用したドリルの動力、ファン、ブロワーなどが導入されました。鉱石を運ぶエレベーターも改良され、麻縄に代わって平織りワイヤロープが使われるようになりました。

1859年当時、アメリカ人は銀鉱山についてほとんど知識がなく、メキシコ人の坑夫や監督が重宝されました。メキシコ式の精錬法が採用されましたが、すぐにアメリカ式のスタンプミルやパン精製法に取って代わられました。ドイツ人坑夫はバレルプロセスを導入しましたが、コムストック・ロードの鉱石にはパン精製法の方が適していました。ワショー・プロセスが開発され、精錬時間が大幅に短縮されました。

運輸とインフラ

鉄道建設以前は、貨物と乗客は10〜16頭の馬やラバに引かせた荷車隊で輸送されていました。鉱石はこれらの荷車隊で溶鉱炉に運ばれ、鉱山に必要な木材や物資も運ばれました。1869年にはバージニア・トラッキー鉄道が開通し、輸送が効率化されました。

水供給も重要な課題でした。バージニアシティ・ゴールドヒル水会社が設立され、シエラネバダ山脈から水を引くパイプラインが建設されました。このパイプラインはワショー・バレーを横切り、世界でも有数の水圧を持つシステムでした。

鉱山事故と技術革新

1869年、イェロージャケット鉱山で火災が発生し、少なくとも35人の坑夫が死亡しました。また、鉱山地下の水問題に対処するために、アドルフ・スートロはスートロ・トンネルを計画しました。このトンネルは、コムストック・ロードの鉱脈から水を排出するだけでなく、換気と鉱石の輸送にも利用されました。

ビッグ・ボナンザとその後

コムストック地区では、1860年から1880年までに316万トン以上の鉱石が採掘されました。最盛期は1877年で、年間1,400万ドル相当の金と2,100万ドル相当の銀が生産されました。しかし、その後生産量は減少し、1880年にはその役目を終えたと考えられました。最も深い坑道は1884年に達し、深さは1,000メートルを超えました。鉱脈の採掘は1922年まで行われ、選鉱くずの再精製は1920年代まで続きました。

コムストックの銀鉱山は、株価操作やインサイダー取引が行われていたことが批判されました。鉱山経営者も私腹を肥やしていたと告発されました。ネバダ州はコムストック・ロードの銀によって「銀の州」と呼ばれるようになりましたが、1878年以降は金の方が多く生産されるようになりました。

コムストック・キングと著名な人物

ジョン・ウィリアム・マッケイ、ジェイムズ・グラハム・フェア、ジェイムズ・C・フラッド、ウィリアム・S・オブライエンの4人は、「ビッグフォー」または「シルバーキング」と呼ばれ、コムストック・ロードで大きな影響力を持っていました。

ジョージ・ハーストは、アメリカ最大の鉱業会社ハースト・ハギン・テビス会社の共同経営者となり、コムストック・ロードの鉱山を運営しました。ウィリアム・チャップマン・ラルストンは多くの鉱山に資金を提供し、ウィリアム・シャロンはラルストンの金融帝国を継承しました。ウィリアム・M・スチュワートは鉱業訴訟に関わり、ネバダ州選出の初代上院議員となりました。アルビンザ・ヘイワードは「カリフォルニア州最初の百万長者」と呼ばれました。

現在の鉱業

現在、コムストック・ロードではバージニアシティのコムストック鉱業会社が探査を続けています。

このように、コムストック・ロードは、その発見から技術革新、富の生成、そして社会への影響まで、アメリカの歴史において重要な役割を果たしました。それは、単なる鉱床以上の意味を持つ場所であり、今もその歴史が語り継がれています。

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