コメット巡航戦車

コメット巡航戦車：第二次世界大戦後期のイギリス 中戦車

第二次世界大戦中盤、北アフリカ戦線で猛威を振るうドイツ軍のティーガーI重戦車や、火力強化されたIV号戦車に苦戦したイギリス軍は、既存の巡航戦車やアメリカから供与されたM4シャーマン戦車の性能不足を痛感していました。この状況を打開するため、イギリスはより強力な戦車の開発を急務としていました。

既存のクロムウェル巡航戦車に17ポンド砲を搭載したチャレンジャー戦車が開発されましたが、開発遅延や車体バランスの問題から、期待されたほどの成果を上げられませんでした。そこで、17ポンド砲を開発したヴィッカース・アームストロング社は、砲身を短縮し、75mm砲（実質76.2mm）を開発しました。この砲は77mm HV（高初速）砲と命名され、17ポンド砲より貫徹力は劣るものの、榴弾の命中精度は向上していました。この77mm HV砲の開発成功が、コメット巡航戦車誕生の鍵となりました。

レイランド社を中心に、クロムウェルをベースに77mm HV砲を搭載した新型[戦車]]の開発が開始され、遂に火力、装甲、機動力のバランスが取れた国産戦車が完成しました。これがコメット[[巡航戦車]です。レイランド社を始めとする複数のメーカーが生産に関わり、最終的に1186両が製造されました。

コメットの性能と特徴

コメットは、クロムウェルMk.IVの車体を発展させたもので、鋳造製の主砲防盾を除き圧延防弾鋼の溶接構造を採用していました。足回りはクロムウェルと同じクリスティー式サスペンションでしたが、重量増に対応するため強化され、小型転輪が追加されました。

77mm HV砲は、1000m先の圧延防弾鋼に対してAPCBC弾で110mm、APDS弾で165mmの貫徹力を発揮し、17ポンド砲よりも優れた命中精度を誇りました。電動旋回式の砲塔に搭載され、7.92mmベサ重機関銃が同軸装備されていました。エンジンは600馬力のロールスロイス・ミーティアMk.III 12気筒ガソリンエンジンを搭載していました。

運用と戦果

1944年9月から量産が始まり、翌年初めに第11機甲師団に配備されました。しかし、バルジの戦いの勃発により、訓練中の部隊はM4シャーマンで再編成され前線に送られました。コメットによる戦闘投入は終戦間際の1945年3月、ライン渡河作戦以降となり、ドイツ戦車との遭遇機会は少なかったものの、運用部隊からは高い評価を得ていました。1945年4月には、ドイツ軍のティーガーIを撃破した記録も残されています。

戦後

戦後、コメットの大半はMk.IBに改造されました。これは、砲塔側面に煙幕弾発射器を追加し、エンジン排気孔の位置を変更したものです。しかし、センチュリオン戦車のような高評価を得ることはありませんでした。これは、コメットが鉄道輸送の制限に適合するように設計されていたため、センチュリオンに搭載されているような新型主砲への換装が不可能だったことが原因の一つです。

第一線装備から外れたコメットは、予備役部隊や訓練用として使用されました。また、香港駐留の英軍部隊では、橋梁の耐荷重制限の関係からセンチュリオンに代わりコメットが運用され続けました。1958年にイギリス軍から退役した後も、アイルランド、フィンランド、南アフリカ、ミャンマー、キューバ、ソマリアなどに輸出され、一部の国では1970年代まで運用されました。南アフリカでは、コメットをベースにした装甲メンテナンス車(AMV)も開発されました。フィンランドでは20ポンド砲を搭載する改修試験も行われたものの、量産には至りませんでした。

派生型とバリエーション

コメットにはいくつかの派生型や試作車両が存在します。例えば、火炎放射戦車試験車両「コメット・クロコダイル」、フィンランド軍が試作した20ポンド砲装備型、空挺輸送可能な軽駆逐戦車試作型「FV4401 コンテンシャス」、自動装填装置付き20ポンド砲を搭載した「COMRES 75」、90mm無反動砲を搭載したアイルランド軍の試作車などがあります。これらの派生型は、主に試作段階にとどまりましたが、コメットの設計思想や技術的可能性を示す貴重な存在です。

ゲームへの登場

コメットは、『War Thunder』、『World of Tanks』、『トータル・タンク・シミュレーター』などのゲームにも登場しており、多くのプレイヤーにその名を知られています。

まとめ

コメット巡航戦車は、第二次世界大戦末期に登場したイギリスの中戦車として、その高い命中精度とバランスの取れた性能で評価されました。しかし、センチュリオン戦車の登場により第一線から退き、その後は様々な国で運用され、いくつかの派生型も開発されました。コメットの歴史は、戦車の技術発展と運用思想の変化を反映した、興味深いものです。

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