コモン・ブースター・コア

コモン・ブースター・コア（Common Booster Core、略称CBC）は、アメリカ合衆国が開発した使い捨て型ロケット、デルタIVシリーズの主要な構成要素です。これは、デルタIVロケットシステムの中核を成すモジュールであり、打ち上げ能力の調整を可能にする基幹部分として機能します。CBCは、全長が40.8メートル、直径が5.1メートルというサイズを持ち、推進力には単一の強力なRS-68液体燃料ロケットエンジンを使用しています。このエンジンは、燃料に液体水素、酸化剤に液体酸素を用いることで、高い効率と大きな推力を実現します。

デルタIVロケットの構成は、打ち上げるペイロードの要件に応じて柔軟に変更されます。中量級から中量級プラスの衛星を軌道に乗せるミッションでは、CBCはロケットの第1段として単体で用いられます。一方、特に重量の大きなペイロードを打ち上げる際には、「デルタIVヘビー」と呼ばれる構成が採用されます。このヘビー構成では、合計3基のCBCが使用されます。中央に位置する1基がロケットの第1段としての中核を担い、その両側にはブースターとして機能する追加の2基のCBCが結合されます。これにより、デルタIVヘビーは極めて高い打ち上げ能力を発揮します。

CBCの開発過程では、厳格な地上燃焼試験が実施されました。最初の燃焼試験は2001年3月17日に、ミシシッピ州にあるジョン・C・ステニス宇宙センターのB-2試験台で行われました。この試験台は、かつてサターンVロケットの試験にも使用された歴史的な施設です。その後、計画された最終試験などが順次行われました。実機としての初の打ち上げは、デルタIVロケット自体の初飛行に際して行われました。これは2002年11月20日のことで、フロリダ州のケープカナベラル空軍基地にある発射台37Bから成功裏に打ち上げられました。

最大能力を持つデルタIVヘビー構成による最初の打ち上げは、2004年12月21日に実施されました。しかし、この初飛行では技術的な問題が発生しました。具体的には、3基全てのCBCにおいて、酸化剤供給系統におけるキャビテーション（液体中の気泡発生）が原因で、エンジンが計画よりも早く停止してしまいました。この不具合により、搭載されたペイロードは当初予定されていた軌道よりも低い位置に投入される結果となりました。この経験から得られた教訓に基づき、酸化剤系統には圧力弁が追加されるなどの設計変更が行われ、以降の信頼性向上に繋がりました。

2014年12月時点でのデータによると、デルタIVロケットは累計28回打ち上げられています。このうち、20回がミディアムまたはミディアム+構成、8回がヘビー構成での打ち上げでした。これらの打ち上げを通じて、合計44基のCBCが宇宙空間へと送られました。

CBCは、ユナイテッド・ローンチ・アライアンス（ULA）がアラバマ州ディケーターに有する140,000平方メートルに及ぶ広大な製造施設で生産されます。完成したCBCは、専用の輸送船「M/Vデルタ・マリナー」を用いて、ヴァンデンバーグ空軍基地やケープカナベラル空軍基地といった打ち上げ拠点へ海上輸送されます。これらの基地で、CBCは搭載衛星や第2段ロケット、補助ブースターといった他の要素と統合され、打ち上げ準備が完了します。

もう一度検索