コリイ・ドクトロウ

コリイ・ドクトロウ（Cory Doctorow, 1971年 7月17日生まれ）は、カナダ出身のSF作家、ブロガー、そしてジャーナリストとして国際的に知られています。特に、デジタル時代の権利、著作権、プライバシーといった問題に強い関心を持ち、その分野での活動家としても影響力を持っています。自身の作品をクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのもとで提供することで、情報共有の自由と創造性の新たな形を模索し、その普及を推進しています。

生い立ちと背景

1971年、カナダのトロントに生まれました。彼の父は、アゼルバイジャンの難民キャンプで過ごした経験を持っています。姓である「ドクトロウ」は、著名な作家であるE・L・ドクトロウと同じですが、両者に血縁関係はありません。この姓は、東ヨーロッパ系のユダヤ人の間で比較的よく見られるものとのことです。また、後にライターや法律家として活躍するティム・ウーとは、小学校時代からの友人でした。

経歴と活動

ドクトロウのキャリアは、テクノロジー分野からスタートしました。1999年には、ファイル共有などのP2P技術を利用したフリーソフトウェアを扱う企業、Opencolaを共同で立ち上げました。この企業は、2003年にカナダのOpentext社に売却されています。

作家としては、初期からその才能が認められ、2000年にはジョン・W・キャンベル新人賞を受賞しました。

2002年からはロンドンに活動拠点を移し、デジタル権利を擁護する国際的な非営利組織、電子フロンティア財団（EFF）の欧州問題担当コーディネーターを務めました。この時期には、英国におけるデジタル権利団体であるOpen Rights Groupの設立にも大きく貢献しています。しかし、執筆活動に一層専念するため、2006年にEFFの常勤職を離れ、以降はフェローとして財団と関わり続けています。

ドクトロウは、自身のブログ「Boing Boing」をはじめ、様々な媒体を通じて、デジタル権益、インターネットにおける表現の自由、監視社会、そして著作権の未来といったテーマについて積極的に論じています。彼は、インターネットがもたらす変化に対して、既存の法的・社会的枠組みがどのように対応すべきか、あるいは再構築されるべきかについて、鋭い洞察を提供しています。

作家活動と評価

EFFを離れて以降、ドクトロウはSF作家としての創作活動を本格化させました。彼の小説は、テクノロジーの進歩が社会や個人に与える影響を深く掘り下げたものが多く、未来予測や社会批評の要素を含んでいます。特に、若者とテクノロジー、あるいは国家や企業による監視といったテーマが頻繁に登場します。

代表的な長編小説としては、『マジック・キングダムで落ちぶれて』（Down and Out in the Magic Kingdom, 2003年）や、『リトル・ブラザー』（Little Brother, 2008年）があり、これらは日本語訳も出版され、日本でも広く読まれています。他にも、『Eastern Standard Tribe』、『Someone Comes to Town, Someone Leaves Town』、『Makers』など多数の小説を発表しています。短編や短編集も多く、アンソロジーへの寄稿も行っています。

小説以外にも、技術、著作権、クリエイティブ・コモンズに関するエッセイや、SF執筆指南書なども執筆しており、その活動範囲は多岐にわたります。

彼の文学作品および著作権啓蒙活動は高く評価されており、数々の重要な賞を受賞しています。

受賞歴

ジョン・W・キャンベル新人賞（2000年）
ローカス賞（2004年、2006年、2007年、2008年など複数回）
サンバースト賞（2004年、2009年）
電子フロンティア財団パイオニア賞（2007年）
ジョン・W・キャンベル記念賞（2009年）
プロメテウス賞（2009年、2014年）

これらの受賞歴は、彼の作品が持つ文学的な価値と、テクノロジー社会への貢献の両面が広く認められていることを示しています。

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