コルテス (身分制議会)

コルテス（Cortes）

コルテスは、スペインとポルトガルにおいて歴史的に存在した身分制議会を指します。中世イベリア半島の政治構造において重要な役割を果たしました。

コルテスの成立

コルテスは、聖職者、貴族、都市代表という3つの身分によって構成されていました。この点は、他のヨーロッパ諸国の身分制議会と共通しています。元々は、封建家臣や聖職者の会議を「コルテ」（Corte、宮廷を意味する言葉）と呼んでいました。13世紀後半になると、都市代表の参加が原則となり、コルテスとして成立しました。

イベリア半島の各国におけるコルテスの成立時期は以下の通りです。

レオン王国：1188年
ポルトガル王国：1211年
カスティーリャ王国：1250年
アラゴン王国：1274年
カタルーニャ：13世紀末から14世紀初頭

コルテスの主な機能は、戦費を賄うための課税への協賛、都市による立法への請願権の行使、そして王位継承への干渉権の保持でした。14世紀以降、コルテスは解散後、国王の決定事項の実施を監視し、その他の事務処理を行うためにフンタを組織しました。このフンタは、アラゴンでは「デプタシオン・ヘネラル」（Deputazion General）、カタルーニャでは「ディプタシオー・ダル・ジャナラル」（Diputació del General）と呼ばれるなど、地域によって異なる名称を持っていました。

コルテスの盛衰

スペイン

カスティーリャ

アラゴン

近世以降

コルテスの最盛期は、絶対王政の形成期である14世紀から15世紀でした。スペインがカスティーリャとアラゴンの2王国に分かれていた時代、そして統一後も、それぞれの王国には別個のコルテスが存在していました。しかし、都市と貴族は次第に王権に屈服していき、17世紀になるとコルテスは徐々に招集されなくなりました。都市代表も国王によって指名されるようになり、実質的な意義を失っていきました。1809年、第一次スペイン革命の過程でカディスにおいて開かれたコルテス（カディス議会）は、近代的な国民議会の最初のものでした。その後も「コルテス」という言葉は残りましたが、それはもはや身分制議会ではありませんでした。

ポルトガル

ポルトガルにおけるコルテスの盛衰については、スペインと同様に、王権の強化とともにその影響力を失っていきました。

関連文献

A.R.マイヤーズ（宮島直樹訳）『中世ヨーロッパの身分制議会』刀水書房、1996年。
江島明「15世紀カスティリアにおけるコルテスの衰退と王領地の都市」『史学雑誌』92－3、1983年。
芝修身「中世スペインの身分制議会（コルテス）」『南山大学図書館紀要』3，1987年。
滝澤修身「コルテスの起源をめぐる研究史概観―カスティーリャ・レオン王国を中心に」『立命館文学』558、1999年。
滝澤修身「中世カスティーリャ・レオン王国におけるコルテスの起源」『立命館史学』22、2001年。
北濱佳奈「近世初期カスティーリャ王国コルテスについて―最近の研究動向より、フェリーペ2世時代を中心に」慶応大『史学』76-1、2007年。
北濱佳奈「フェリーペ2世期のカスティーリャ王国コルテスについて―制度史的考察の試み」『スペイン史研究』23、2009年。

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