コルネリウ・コドレアヌ

コルネリウ・コドレアヌ：鉄衛団の指導者とその激動の生涯

コルネリウ・ゼレア・コドレアヌ (1899年9月13日-1938年11月30日) は、20世紀前半のルーマニアを揺るがしたファシスト組織、鉄衛団の指導者として知られる政治家です。その生涯は、反ユダヤ主義、政治的暴力、そして権力闘争に彩られた、激動の時代を反映しています。

若き日のコドレアヌと反共産主義

フシで教師の父とドイツ人母の間に生まれたコドレアヌは、ルーマニア民族主義者の父の影響を受け、反共産主義思想を強く抱くようになりました。第一次世界大戦には若くして従軍。戦後、ヤシでボルシェヴィキの扇動を目の当たりにし、共産主義を最大の敵とみなすようになりました。特に、ソ連を共産主義の根源と見なした彼は、ユダヤ人をソ連の工作員と結びつけ、反ユダヤ主義的な見解を強めていきました。

幼少期からシュテファン大公を英雄として崇拝していたコドレアヌは、大公のカリスマ性と数多くの女性関係に強い憧憬を抱いていました。自身もカリスマ的な魅力を持ち、多くの女性信者から熱狂的な支持を集めました。これらの女性信者はコドレアヌを、ルーマニアを救う救世主、高潔な騎士として賛美しました。

政治家としてのキャリアと鉄衛団の創設

ヤシで法律を学んだコドレアヌは、政治家としての道を歩み始めます。反共産主義を掲げ、労働者への働きかけを強めました。A.C.クーザらとの交流を通じて、ユダヤ人をルーマニア社会の脅威とみなす思想を深めていきます。

1919年には、短命に終わった国民意識衛隊に参加。その後、反動的なグループとの連携や、ストライキ鎮圧への積極的な関与を通じて、反共産主義運動を展開していきました。しかし、その過程でアレクサンドル・ヨアン・クザ大学を一時追放されるなど、様々な困難を経験しています。

1922年にはドイツに留学。イタリア・ファシズムを賞賛する一方、ワイマール共和国を批判しました。帰国後、クーザと共に「国家キリスト教擁護同盟」を設立し、反ユダヤ主義的なプロパガンダを展開。1923年の憲法でユダヤ人に完全な市民権が与えられると、ヤシ・ゲットー襲撃を扇動。さらに、政府要人の暗殺計画にも関与したとして逮捕されましたが、証拠不十分で釈放されています。

政治的暴力と大天使ミカエル軍団

投獄中、コドレアヌは「大天使ミカエル軍団」の創設を計画。釈放後、独自の忠誠システムを構築し、「十字架の兄弟団」を創設。警察への復讐として、県知事を暗殺する事件を起こし、裁判では無罪となっています。

1925年の華やかな結婚式の後、コドレアヌは政治活動に復帰。「大天使ミカエル軍団」を本格的に結成。東方正教会の価値観を掲げつつ、過激な反ユダヤ主義を主張しました。ユダヤ人をルーマニア社会の堕落要因として断罪し、その排除を訴えました。

1927年にはシナゴーグ襲撃を組織。ルーマニア社会における反ユダヤ主義の高まりを背景に、勢力を拡大していきました。コドレアヌの反ユダヤ主義は、同時代の他の反ユダヤ主義者よりも過激なものでした。彼は、ルーマニア民族の優越性を主張し、領土拡張主義的な思想も抱いていました。

非合法化と議席獲得、その後

政府による弾圧を受け、軍団は一時的に非合法化されますが、1931年の選挙で下院議員に当選。政敵の汚職を暴き、国民の注目を集めました。しかし、1933年には、ドイツへの傾倒を背景に再び弾圧を受け、党首ドゥカの暗殺事件が発生。コドレアヌは一時的に身を隠しましたが、裁判では再び無罪となりました。

その後、鉄衛団は「全ては国のために」という政党として活動。1937年の選挙では、15.5%の得票率を獲得し、ルーマニアで3番目に大きな勢力となります。しかし、カロル2世との対立は深まりました。

カロール2世との決裂と処刑

カロル2世は、鉄衛団の勢力拡大を警戒。1938年、コドレアヌは誹謗中傷罪などで逮捕・起訴されました。不正な裁判の後、コドレアヌは10年の懲役を宣告されます。しかし、軍団の活動は地下で継続。カロル2世は、鉄衛団の反乱の兆候を察知すると、コドレアヌらを処刑しました。

コドレアヌの死は、ルーマニアの歴史に大きな影を落としました。彼の反ユダヤ主義と政治的暴力は、多くの犠牲者を出しました。彼の生涯は、20世紀前半のヨーロッパの激動を象徴するものです。

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