鉄衛団

鉄衛団：ルーマニアを震撼させた極右民族主義運動

鉄衛団（ルーマニア語: Garda de Fier、英語: Iron Guard）は、1927年から第二次世界大戦初期にかけてルーマニアで台頭した極右の反ユダヤ主義政党であり、準軍事組織です。1940年から1941年にかけて短期間政権を掌握しましたが、その暴力的な活動と反ユダヤ主義的な政策は、ルーマニアの歴史に暗い影を落としました。

誕生と台頭：コルネリウ・コドレアヌのカリスマ性

鉄衛団は、コルネリウ・コドレアヌ（Corneliu Zelea Codreanu）によって「神使ミハイル軍団」として創設されました。コドレアヌはカリスマ的な指導者であり、巧みなプロパガンダによって農民や学生層を中心に多くの支持者を獲得しました。彼らは緑色の制服を着用し、「レジオナーレ」（Legionnaires）と呼ばれ、ローマ式敬礼を用いました。

鉄衛団はルーマニア正教会を基盤としており、他のヨーロッパのファシズム運動とは異なり、明確な宗教的色彩を持っていました。反共主義、反ユダヤ主義、反自由主義、反議院内閣制などを掲げ、愛国主義的なスローガンと宗教的熱情を巧みに利用して支持者を拡大しました。しかし、同時に、政治的暗殺など暴力的な手段も辞さず、その非道な行為は国民からの恐怖と不安を招きました。

暴力と暗殺：血塗られた権力闘争

鉄衛団は、王党派とも激しく対立し、1933年と1939年にはルーマニア首相を暗殺するなど、数々の暴力事件を引き起こしました。1937年の議会選挙では、第3党となるほどの支持を得ましたが、国王カロル2世は鉄衛団の台頭を阻止しようとしました。

コドレアヌは1938年に逮捕・処刑され、その後も鉄衛団による暗殺事件は続き、ルーマニアの政治状況はさらに不安定なものとなりました。コドレアヌの死後、ホリア・シマ（Horia Sima）が指導者となり、鉄衛団はますます過激な反ユダヤ主義政策を進めていきました。

短期政権とホロコーストへの加担

第二次世界大戦の勃発後、枢軸国との連携を深めた鉄衛団は、1940年9月4日、クーデターによって政権を掌握しました。シマは副首相となり、鉄衛団はユダヤ人に対する弾圧を強め、ホロコーストにも加担しました。しかし、この政権は長く続かず、1941年1月24日、アントネスク将軍によるクーデターによって鉄衛団は鎮圧されました。

鉄衛団によるユダヤ人虐殺は甚大なものであり、特に東ルーマニアでは集団殺戮が行われました。鉄衛団は政権を失った後も、国外に逃亡したり、地下組織として活動を続けました。

鉄衛団の遺産と現代への影響

鉄衛団は、その短命な政権にも関わらず、ルーマニアの歴史に大きな影響を与えました。その暴力的なイデオロギーと反ユダヤ主義は、現代の極右団体にも影響を与えていると指摘されています。鉄衛団の残した歴史は、ファシズムの危険性と人権侵害の深刻さを改めて認識させるものです。

参考文献

The Green Shirts and the Others: A History of Fascism in Hungary and Rumania by Nicholas M. Nagy-Talavera
The Legionary Movement by Alexander E. Ronnett
The Sword of the Archangel, by Radu Ioanid
その他多数の文献

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