コロニアルナンバー

コロニアルナンバー：オセアニア競馬を彩る独自の牝系

オーストラリアとニュージーランドの競馬界において、独特の分類体系として知られるのが「コロニアルナンバー（Colonial Numbers）」、あるいは「コロニアルファミリー（Colonial Families）」です。これは、サラブレッド以外の、主にアラブ馬の血を受け継ぐ優れた牝系を指し、ジェネラルスタッドブック（サラブレッドの系統を記録した世界的な家系図）に遡れない馬たちを独自に番号付けしたものです。

オーストラリア競馬の黎明期、イギリスから輸入されたサラブレッドやアラブ馬、アングロアラブなどが活躍していました。長距離レースが主流だった時代、これらの馬たちは優れた持久力とスピードを誇示しました。1818年から1870年にかけて、多くのサラブレッドが輸入される一方で、一部の非サラブレッド牝系は、その耐久力とスピードにおいて優れていたため、オーストラリアとニュージーランドのスタッドブックに正式に登録され、独自の番号が割り当てられました。

このコロニアルナンバーの起源は、初期のオーストラリア競馬を支えた非サラブレッドの牝馬たちにあります。これらの馬たちは、アラブ馬の血を濃く受け継ぎ、サラブレッドにはない独特の能力を備えていました。例えば、最古のコロニアルナンバーであるC15のカリブーは、1908年にインドから輸入されたアラブ種牡馬（オールド）ヘクターの子孫でした。また、血統書の紛失などによりジェネラルスタッドブックへの遡及が不可能な牝系も、コロニアルナンバーに含まれています。C3のカティサークはその一例で、輸入時の記録は残っていましたが、その祖先を辿ることができませんでした。

コロニアルナンバーは、C1からC36までが主要な系統として認識されています。しかし、これ以外にも短命に終わった系統などが存在し、オーストラリアのスタッドブックでは「NSB (Non-Stud-Book)」と表記され、c37からc74までの番号が割り当てられています。

この番号体系は、ニュージーランド競馬会議幹事を務めたW・H・E・ワンクリンによって最初に作成され、その後、競馬記者のA・F・ハウワースやダグラス・バリーらによって更新、整理されてきました。現在、世界的に広く用いられているコロニアルナンバーは、白井透氏の『The Family Tables of Racehorses』を参考にしていることが多いようです。

コロニアルナンバーは、オーストラリアとニュージーランドの競馬史を語る上で欠かせない要素です。サラブレッドという枠にとらわれない、独自の牝系を辿ることで、これらの地域における競馬の多様性と歴史をより深く理解することができます。それぞれの番号に秘められた物語は、競馬ファンにとって、新たな発見と探求の喜びを与えてくれることでしょう。それらは単なる番号ではなく、オーストラリアとニュージーランド競馬の歴史と伝統、そして優れた競走馬を生み出した数々の牝馬たちの血脈を繋ぐ重要な指標なのです。

これらの牝系は、サラブレッドが主流となった現代においても、その遺伝的な強さを示し続けています。コロニアルナンバーを通して、オセアニア競馬の豊かな歴史と、サラブレッド以外の血統の重要性を再認識することができるのです。今後も、これらの貴重な遺伝資源が大切に保護され、競馬界に貢献し続けることを期待したいものです。

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