コンコルド協定

コンコルド協定：F1世界選手権を支える複雑な協定

フォーミュラ1 (F1) 世界選手権は、FIA（国際自動車連盟）、FOM（フォーミュラ・ワン・マネージメント）、そしてF1チームの三者によって運営されています。その運営方法や商業的権利に関する協定が、コンコルド協定です。名称は、協定締結当時FIAの本部があったフランス・パリのコンコルド広場に由来します。

コンコルド協定の役割

F1レギュレーションが競技ルールを定めるのに対し、コンコルド協定は運営に関する様々な約束事を定めています。参戦チームはすべて協定に同意し、その内容に従わなければなりません。協定文書は膨大で複雑であり、頻繁な改定・変更が行われています。関係者には厳格な守秘義務が課せられており、内容は一般には公開されていません。

協定は、FIAによる選手権の主催・統治、レギュレーション変更手順、各グランプリの賞金や収益分配方法、テレビ放映権による収益分配方法などを規定しています。有効期間があり、全チームの署名によって更新されます。過去には協定失効による混乱や、チーム間の紛争も発生しました。

参戦条件とチーム数

選手権への参戦には、いくつかの条件があります。チームはコンストラクター（製造者）でなければならず、車体の設計に関する知的財産権を所有している必要があります。パワーユニットやギアボックスは条件に含まれません。参戦チームは最大13チーム、マシンは26台までと制限されており、新規参入にはFIAの審査と高額な供託金が必要となります。既存チームの参戦権を購入する場合は、これらの手続きは不要です。新規参入規制は、競技レベルの高水準維持と、チームの安定性を確保するために行われています。過去には、チーム数の急増により、脆弱なチームがレースを欠場したり、短期間で撤退する事例が相次いだためです。

収益分配

F1には各レースごとの賞金がありません。代わりに、FOMが管理する年間収益が、コンコルド協定に基づいてチームに分配されます。分配方法は協定の骨子であり、一般には公開されません。分配金の額はチームの成績や参戦年数、貢献度などを考慮して決定され、チーム側は常に増額を要求しています。分配金は、順位、参戦年数、過去の貢献度、そして特別な契約に基づいて変動します。フェラーリなど、歴史のあるチームはより多くの分配金を得ています。年間レース数は最大21戦までと定められており、それ以上の開催には全チームの同意が必要です。

コンコルド協定の歴史：対立と協調

コンコルド協定の誕生には、F1の商業権を握っていたバーニー・エクレストンと、FIAのジャン＝マリー・バレストルとの対立が背景にあります。エクレストンはFOCA（F1製造者協会）を率いてF1の商業権を掌握し、巨額の収益を生み出しました。一方、FISA（国際自動車スポーツ連盟）のバレストルは、エクレストンの権力拡大に反発し、両者は対立状態に陥りました。この対立は「FISA-FOCA戦争」と呼ばれ、F1分裂の危機をもたらしました。1981年、この危機を回避するために最初のコンコルド協定が結ばれました。

その後、コンコルド協定は複数回改定・延長されましたが、エクレストンの独占的な商業権運営への反発や、自動車メーカーの参戦増加、財政問題など、常に様々な問題が伴いました。2000年代には、自動車メーカー連合が新たなシリーズを立ち上げる計画を発表し、シリーズ分裂の危機に直面しました。しかし、交渉の結果、分裂は回避され、コンコルド協定は維持されました。

カスタマーシャシー問題とシリーズ分裂騒動

コンコルド協定の改定では、カスタマーシャシー問題が大きな焦点となりました。他のチームからシャシーを購入して参戦することを認めるかどうかが議論されました。上位チームは反対し、下位チームは賛成しました。最終的には、事実上カスタマーシャシーは認められませんでした。これにより、スーパーアグリなどのチームは撤退に追い込まれました。

また、2007年末に旧協定が失効した際には、新協定締結までの間、F1は事実上協定なしで運営されました。この期間には、テレビ放映権料の未払い、レギュレーション変更の混乱、そしてFOTA（フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション）の結成によるFIAとの対立などが発生しました。FOTAは、コスト削減などを求めてFIAと激しく対立しましたが、最終的には合意に達し、シリーズ分裂は回避されました。

まとめ

コンコルド協定は、F1という複雑なビジネス構造を支える重要な協定です。歴史的な背景、複雑な収益分配システム、チーム間の駆け引き、そして将来の課題など、F1の現状を理解するためには欠かせないものです。

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