フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション

フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション（FOTA）：F1を揺るがしたチーム連合の軌跡

フォーミュラ・ワン・チームズ・アソシエーション（FOTA）は、F1世界選手権に参戦するチームによって2008年に設立された組織です。2014年の解散まで、F1の統治機構である国際自動車連盟（FIA）との交渉や、チーム間の意見調整、コスト削減策の実施など、F1の運営に多大な影響を与えました。本稿では、FOTAの活動内容、FIAとの対立、そして解散に至るまでの経緯を詳細に解説します。

FOTAの活動：レギュレーション改革からコスト削減まで

FOTAの活動は大きく分けて、レギュレーション改革、商業契約交渉、コスト削減策の3つに分類されます。

1. レギュレーション改革： FOTAは、FIAと協力して技術規定と競技規定の改革案を策定しました。内部にはテクニカル・ワーキング・グループとスポーティング・ワーキング・グループという2つの専門部会を設け、詳細な検討を行いました。改革案は、F1の安全性向上や競争力の強化を目的としていました。

2. 商業契約交渉： F1の商業権管理者であるフォーミュラ・ワン・マネージメント（FOM）との間で、コンコルド協定（F1の商業契約）の更改交渉を行いました。この交渉は、チームへの収益分配や、F1の将来戦略を決定する上で非常に重要な役割を果たしました。

3. コスト削減策： 世界的な金融危機を背景に、FOTAはF1の高コスト体質を改善するための様々な取り組みを行いました。具体的には、リソース制限協定（RRA）による開発費の制限、運動エネルギー回生システム（KERS）の使用自粛（2010年のみ）、開発施設の夏季一時閉鎖などが挙げられます。また、ファンの拡大を目指したプロモーション活動として、「Fan's Forum」といったイベントも開催されました。

FIAとの対立と分裂回避：バジェットキャップ問題

FOTA設立の背景には、FIA前会長マックス・モズレー氏による高コスト体質への批判がありました。モズレー氏は、2010年からのスタンダードエンジン導入や年間予算制限（バジェットキャップ）を提案しましたが、これはFOTAの猛反発を招きました。特にバジェットキャップは、上限額が4000万ポンド（約60億円）と厳しく、ハンディキャップ方式である点が問題視されました。

激しい対立の中、FOTAは新シリーズ設立を表明するまでに至りましたが、最終的にはバジェットキャップの撤回とモズレー氏のFIA会長選不出馬という条件を引き出し、分裂を回避しました。

RRAとチーム間の不和：監視の難しさ

FIAのバジェットキャップを拒否したFOTAは、自主的なコスト削減ルールとしてRRAを締結しました。しかし、RRAは紳士協定に過ぎず、監視が難しく、違反しても競技上のペナルティは科されませんでした。そのため、RRAは必ずしも効果的に機能したとは言えず、チーム間での意見の相違や不信感を生む要因となりました。

FOTAの衰退と解散：コンコルド協定更改と内紛

2010年以降、FOTAは徐々に結束力を失っていきました。チーム間の意見対立に加え、コンコルド協定更改交渉におけるFOM代表バーニー・エクレストン氏との摩擦も影響しました。2011年には主要チームがFOTAを脱退し、最終的に2014年には財政難や存続目的の行き詰まりから解散に至りました。

FOTAの遺産：F1への影響

FOTAは短命に終わったものの、F1の歴史に多大な影響を与えました。コスト削減に向けた取り組みやレギュレーション改革への貢献は、現在のF1の基盤を築く上で重要な役割を果たしました。FOTAの経験は、チーム間の協調と競争のバランス、そしてFIAとの適切な関係構築の難しさを改めて示すものとなりました。FOTAの功績と失敗は、今後のF1運営において重要な教訓となるでしょう。

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