コンスタンス・オブ・カスティル

コンスタンス・オブ・カスティル（1354年 - 1394年）は、カスティーリャ王ペドロ1世とマリア・デ・パディーリャの間に生まれた王女で、イングランド王族ランカスター公ジョン・オブ・ゴーントの二番目の妃となった人物です。彼女の生涯は、当時のヨーロッパにおける政治的な駆け引きと王位継承の複雑な状況を色濃く反映しています。

1371年、コンスタンスはアキテーヌでジョン・オブ・ゴーントと結婚しました。この結婚は、単なる個人的な結びつき以上の意味を持っていました。ジョンはイングランド王エドワード3世の息子であり、ランカスター公という有力な地位にありました。コンスタンスとの結婚は、彼にカスティーリャ王位への主張権を与える可能性を秘めていたのです。

二人の間には、一男一女が誕生しました。キャサリン（1372/1373年 - 1418年）とジョン（1374年 - 1375年）です。キャサリンは後にカスティーリャ王エンリケ3世と結婚し、両家の和解に重要な役割を果たしました。一方、息子ジョンは幼くして亡くなっています。

コンスタンスの妹イザベラも、1372年にジョン・オブ・ゴーントの弟であるヨーク公エドマンド・オブ・ラングリーと結婚しており、姉妹揃ってイングランド王室と深い関係を結びました。しかし、コンスタンスの人生を語る上で欠かせないのは、彼女の父ペドロ1世の悲劇的な運命です。

ペドロ1世は、異母兄エンリケ2世との間でカスティーリャ王位を巡る争い（第一次カスティーリャ継承戦争）を繰り広げ、1369年に殺害されて王位を奪われました。コンスタンスは、父の死によって王位継承権を主張する立場となりました。ジョン・オブ・ゴーントは、妻の権利を盾に1386年から1389年にかけてカスティーリャへ遠征し、王位奪還を試みましたが、成功には至りませんでした。

その後、コンスタンスの娘キャサリンが、エンリケ2世の孫エンリケ3世と結婚することになり、長年の対立に終止符が打たれました。この結婚は、両家の和解を象徴するものであり、コンスタンスが亡くなる前年の1393年に実現しました。

1394年、コンスタンスはレスターで息を引き取りました。彼女の死後、ジョン・オブ・ゴーントは長年の愛人であったキャサリン・スウィンフォードを1396年に三番目の妃に迎えています。コンスタンスの生涯は、中世ヨーロッパの王侯貴族の複雑な人間関係と、政治的な野望が絡み合った時代を映し出す鏡であると言えるでしょう。彼女の結婚と、それに伴うカスティーリャ王位を巡る動きは、当時のヨーロッパ史に大きな影響を与えました。

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