コンスタンツァ市電

コンスタンツァ市電の歴史と特徴

コンスタンツァ市電（Tramvaiul din Constanţa）は、ルーマニアの海沿いの都市コンスタンツァにかつて存在した路面電車です。1984年に開通し、数々の路線がありましたが、2008年には全ての運行が終了しました。かつての栄光を振り返ると共に、その歴史を紐解いてみましょう。

起源と初期の歴史

コンスタンツァでの路面電車の起源は、1905年に始まります。当時、都市から郊外の観光地へ向かう馬車鉄道が開通しましたが、電化されたのは翌1906年のことでした。しかしこの路線は長続きせず、すぐに廃止されてしまいました。さらに1943年には、第二次世界大戦の影響により、市内に再び路面電車が開通しましたが、施設が全てソビエト連邦のオデッサに移設され、わずか1年足らずの運行で姿を消しました。この出来事から、コンスタンツァでの公共交通機関は主に路線バスやトロリーバスに頼ることになりました。

コンスタンツァ市電の誕生

1980年代に入ると、ルーマニア政府は輸入品への依存を減らし、国民の生活に必要な公共交通機関の整備を進める政策をとり始めました。コンスタンツァ市もその方針の下、1984年に新たな路面電車、コンスタンツァ市電が開通しました。開通当初は小規模な路線でしたが、すぐに路線網が拡大し、同じ年に第2の路線が誕生。その後も1986年や1996年にさらなる延伸が行われ、最終的には総延長44km、7系統の広大な路線網が構築されました。

車両と技術

この時期、コンスタンツァ市電はルーマニアの国産車両である3車体連接車のV3Aを導入し、1990年まで運用されました。1999年以降は、ドイツのベルリンから譲渡された2車体連接車のタトラKT4Dも加わり、これらの車両は市民の大切な交通手段として機能していました。

廃止の経緯

しかし、2000年代に入ると、当時の市長ラドゥ・マザーレが路面電車を交通渋滞の要因と考え、廃止へと向かう決断を下しました。2004年から始まった路線網の撤去は急速に進み、2008年10月には完全廃止が実施されました。運行されていた車両はV3Aが35両、KT4Dが15両で、全てスクラップとして売却されました。

現状と将来の展望

廃止後、コンスタンツァでは路線バスが公共交通の主力となりましたが、環境に配慮した交通手段や輸送力の強化が求められる中、2016年時点で市当局は再度の路面電車導入を検討しているとのことです。なお、当時の名残として、バス停の一つには「市電車庫（Depoou Tramvaie）」という名称が今も残っています。

このように、コンスタンツァ市電の歴史は多彩であり、短命ながらも市民に大きな影響を与えてきた交通手段であったと言えるでしょう。

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