コンスタンティノス6世

コンスタンティノス6世は、771年1月14日に生まれ、東ローマ帝国イサウリア朝の第4代皇帝として、780年から797年まで在位しました。父は第3代皇帝レオーン4世であり、彼の死後、わずか9歳で即位しました。幼少のため、母であるエイレーネーが摂政として政治を主導しました。

エイレーネーはイコノクラスム（イコン破壊運動）に反対し、イコンの復活を推進しました。しかし、この政策はイコノクラスムを支持する勢力との対立を生み、コンスタンティノス6世もまた、母との不仲からイコノクラスム支持に傾きました。ところが、彼はイコノクラスム支持派とも対立するようになり、政治的な立場は不安定なものとなりました。

さらに、祖父であるコンスタンティノス5世にならい、第一次ブルガリア帝国への親征を試みましたが、戦うことなく逃走するという失態を演じ、軍や政府高官からの支持を失いました。この失態を機に、母エイレーネーは797年に軍を動かし、コンスタンティノス6世を捕縛。実の息子であるにもかかわらず、目をくりぬいて追放するという非情な処置を取りました。

コンスタンティノス6世の追放後、東ローマ帝国は大きく動きました。東部ではエイレーネーが自ら女帝を宣言し、西部ではフランク王国のカール大帝がローマ教皇レオ3世によってローマ皇帝に戴冠され、帝国の東西分裂が明確化しました。追放されたコンスタンティノス6世は、コンスタンティノポリスの片隅でひっそりと暮らしていたと伝えられていますが、その詳細は不明です。

コンスタンティノス6世の結婚生活は複雑でした。当初、カール大帝の娘ロトルートと婚約していたものの、イコン復活政策後に解消されました。その後、小アジアの没落地主の娘であるマリアと結婚し、2女をもうけましたが、795年に離婚し、マリアは修道院に入れられました。その後、宮廷女官テオドテーと再婚し、2男をもうけました。

娘のエウフロシュネは、後にアモリア王朝の初代皇帝となるミカエル2世と結婚し、皇后となりました。コンスタンティノス6世の息子であるレオーンは、796年に生まれましたが、797年には亡くなっています。

コンスタンティノス6世の生涯は、母エイレーネーとの複雑な関係、イコノクラスムを巡る対立、そして自身の政治的失態によって彩られた悲劇的なものでした。彼の治世は、東ローマ帝国の歴史において重要な転換期であり、その後の帝国の発展に大きな影響を与えました。

参考文献としては、井上浩一著『ビザンツ皇妃列伝』（筑摩書房、1996年）が挙げられます。

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