コントルダンス

コントルダンス（Contredanse）

17世紀から18世紀にかけて、主にフランスをはじめとするヨーロッパ大陸の社交界で広く親しまれた舞曲の一つです。その名称はフランス語の「contredanse」で、これはイギリスの「カントリー・ダンス」（Country Dance）に由来するとされています。

名称と解釈

「コントルダンス」という言葉は、「向かい合って踊る」という形式に由来しており、日本語では「対舞曲」と訳されることもあります。また、その起源であるカントリー・ダンスを直訳し、「田園舞曲」と呼ばれることもありますが、これは17世紀のイギリスにおけるカントリー・ダンスが、既に田園地帯の農民に限らず、都市部の様々な階層の人々によっても踊られていた実態を捉えきれていないため、限定的な解釈と言えるでしょう。

音楽的特徴

コントルダンスの楽曲は、一般的に急速なテンポの2拍子系が多く見られ、8小節をひとまとまりとした周期的な反復を特徴としています。しかし、この舞曲形式が他の舞曲のステップを柔軟に取り入れたことから、後述するように、メヌエットのような3拍子系の楽曲もコントルダンスとして存在することがあります。

舞踊の形式

コントルダンスは集団で行われる舞踊で、男女のペアが順に対面する相手やパートナーを交換しながら、グループ内の全員と踊るように進行していくのが基本的な形式です。当時の社会習慣として、踊る順序は身分の高い者から先に始められました。例えば宮廷の舞踏会では、王族が最初に踊り、次に身分の高い貴族たちが続きました。

メヌエットのように特定の決まったステップが存在するわけではない点が、コントルダンスの大きな特徴です。むしろ、コントルダンスは舞踊の「形態」や「進行形式」を指す言葉であり、実際のステップとしてはガヴォットやメヌエットなど、他の舞曲のステップを用いて踊られました。このため、コントルダンスはメヌエットのような特定のステップを持つ舞曲と比べ、より広義の概念を持つ舞踊形式であると理解できます。

フランスで発展したコントルダンスの中には、複数のカップルが四角形（スクエア）を形成して踊る形式があり、これは後にカドリーユへと発展していきました。

具体例として、モーツァルトの「2つのカドリーユ」K.463（448c）の第1曲はメヌエット形式で書かれており、コントルダンス形式の中でメヌエットのステップが用いられた例と考えられます。また、モーツァルトの「4つのコントルダンス」K.101（250a）の第1曲はガヴォット形式であり、楽曲中にはガヴォットのステップ（パ・ド・ガヴォット）で踊ることが可能な部分が複数見られます。

主な作品と作曲家

18世紀の主要な作曲家たちは、コントルダンスの楽曲を数多く手掛けました。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトはその一人で、彼はダンスをこよなく愛し、ザルツブルクやヴィーンで開催された家庭舞踏会に踊り手として参加したことでも知られています。モーツァルトはメヌエットやドイツ舞曲とともに、多くのコントルダンスを作曲しました。彼のコントルダンスの中には、作曲者自身が「戦闘」K.535や「英雄コーブルクの勝利」K.587といった表題を付けた作品があるのが特徴的です。

ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンもまた、「12のコントルダンス」を作曲しています（1795-1802年）。この作品群の中でも、第7曲は後に彼のバレエ音楽「プロメテウスの創造物」や、さらに代表的な交響曲第3番「英雄」の終楽章に転用されるなど、重要な素材として用いられました。

コントルダンスは、その活気ある音楽と、集団での相互作用を伴う舞踊形式によって、当時のヨーロッパ社交界に彩りを添えました。

もう一度検索