コンパクトロン

コンパクトロン (Compactron)

コンパクトロンは、二極真空管、三極真空管、五極真空管などの機能を一つの構造に統合した真空管の一種です。この技術は、特に1961年にゼネラル・エレクトリック社によって開発され、主にテレビ受像機やラジオ受信機での利用を目的としました。トランジスタ式電子機器の普及時代において、コンパクトロンはそれに対抗するための革新的な解決策となりました。

開発の背景

コンパクトロンは、特に12ピンによるデュオデカ・ベースを持つ多電極構造管として商標名が付けられていました。実は、多電極管の概念は古く、1926年にはドイツで製造されていましたが、コンパクトロンはその進化形といえる存在でした。カラーテレビの普及において高出力と高周波の対応が求められる中、トランジスタでは満足な性能が得られなかったため、コンパクトロンが注目を浴びました。初のポータブルカラーテレビ「ポータカラー」においては、搭載された13本の真空管の内10本がこの技術を利用していました。

当時のすべての真空管ベースの電子機器には、何らかの多電極管が用いられ、1950年代から60年代にかけてのAM/FMラジオ受信機には、6AK8（EABC80）などが広く採用されていました。コンパクトロンは、一つの管に複数の真空管の機能を集約することで、消費電力と発熱を抑えるデザインが実現されていました。この考え方は、後にトランジスタ回路が集積回路に進化する過程に似ています。

さらに、一部の高級オーディオ機器やギターアンプでも使用され、特にアンペグやフェンダー社の製品に使用実績があります。しかし現代において、コンパクトロンを使用する真空管ベースのHi-Fiシステムはあまり見られず、通常はより入手しやすくシンプルなタイプの真空管が使われています。現在は7868管が使われており、これはコンパクトロンと寸法は同じですが、9ピンのベースを持つノバー管です。

コンパクトロンの特徴

製造時の設計によって、コンパクトロンの排気口の位置は異なりますが、多くは直径約3⁄4インチの中心部分に配置されています。ガラス管の直径は、内部構造の違いによって11⁄8インチから23⁄4インチの範囲内となっています。

さまざまなタイプ

コンパクトロンには多くの種類が存在します。例えば、6AG11は双二極双三極構造を持ち、FMステレオ放送用に設計されています。6BK11はトリプル三極管であり、他にも6C10や6K11など、様々な用途に応じた設計がなされています。これらはすべてテレビ受信機回路の特殊なニーズに応えるために製造され、各種真空管番号が割り当てられました。

技術的進化と陳腐化

コンパクトロンの機能は、次第にアナログおよびデジタル集積回路に置き換えられていきました。1970年代中頃から後半にかけては、真空管とトランジスタ、そして集積回路を組み合わせたハイブリッドテレビが登場しましたが、1980年代半ばになると、コンパクトロンを使用するテレビはなくなり、1990年代初頭にはその生産も終了しました。時代とともに進化した技術により、コンパクトロンは次第に使われなくなっていったのです。

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