コンパルソリーフィギュア

コンパルソリーフィギュア（Compulsory figures）は、フィギュアスケートの黎明期から1990年まで、男子シングルと女子シングルで実施されていた種目です。スクールフィギュアや規定とも呼ばれ、選手は氷上を滑走し、定められた図形を正確に描く技術と滑走姿勢の美しさを競いました。この「フィギュア」という言葉は、フィギュアスケートの語源となっています。

歴史

コンパルソリーフィギュアは、フリースケーティングと共にフィギュアスケート競技の初期から存在し、1896年の第1回世界選手権でも採用されました。競技会では、常に最初の種目として実施されていました。また、コンパルソリーフィギュアに特化した競技としてスペシャルフィギュアも存在しました。

当初、コンパルソリーフィギュアは競技全体の得点において大きな割合を占めており、1968年までは6割もの比重がありました。しかし、1969年には5割に減少し、1973年にはショートプログラムが導入されたことで、コンパルソリーフィギュアの比重は4割にまで減少しました。

1975年の国際スケート連盟（ISU）総会では、コンパルソリーフィギュアの廃止案が提出されました。当時の会長であるジャック・ファバールは廃止を強く支持しましたが、アメリカなどが「規定はフリーの基本」と主張し反対したため、廃止は見送られました。しかしその後も、コンパルソリーフィギュアの比重は徐々に減少し、1976年以降は3割、1989年には2割となりました。1988年のISU総会では、アメリカ、カナダ、イギリス、ニュージーランドの4ヶ国が廃止に反対したものの、廃止が決定され、1990年3月の世界選手権を最後に国際スケート連盟の競技会からは完全に姿を消しました。

現在では、競技としてのコンパルソリーフィギュアが行われることはほとんどありません。しかし、日本のバッジテストでは、1990年代後半の規定改定により、1級で1番から3番、2級で4番の課題が残されました。その後、2008年の改訂では、コンパルソリーと呼べるものは初級のハーフサークルのみとなりましたが、一方で採点方式の変化に対応するため、ステップとしてブラケット、ロッカー、カウンター、ループなどがテストされるようになりました。

競技方法

コンパルソリーフィギュアでは、選手は1つの課題に対して左右の足でそれぞれ3回ずつ、合計6回滑ります。奇数人の審判員が、滑走姿勢と氷上に描かれた図形の正確さを評価し、0.0から6.0の範囲で採点します。この採点結果に、課題ごとに設定された難易度係数を掛けて、各課題の得点を算出します。全ての課題の合計得点が、コンパルソリーフィギュアの最終得点となります。

ショートプログラムやフリースケーティングとは異なり、コンパルソリーフィギュアには音楽は使用されず、選手はシンプルな衣装を着用していました。

課題

以下はコンパルソリーフィギュアで用いられた主な課題です。

フォア・アウト・サークル
フォア・イン・サークル
バック・アウト・サークル
バック・イン・サークル
フォア・チェンジ
バック・チェンジ
スリー・スリー
アウト・スリー
イン・スリー
フォア・アウト・ダブルスリー
フォア・イン・ダブルスリー
バック・アウト・ダブルスリー
バック・イン・ダブルスリー
フォア・アウト・ループ
フォア・イン・ループ
バック・アウト・ループ
バック・イン・ループ
アウト・ブラケット
イン・ブラケット
アウト・ロッカー
イン・ロッカー
アウト・カウンター
イン・カウンター
フォア・ワンフットエイト
バック・ワンフットエイト
アウト・チェンジ・スリー
イン・チェンジ・スリー
フォア・チェンジ・ダブルスリー
バック・チェンジ・ダブルスリー
フォア・チェンジ・ループ
バック・チェンジ・ループ
アウト・チェンジ・ブラケット
イン・チェンジ・ブラケット
フォア・パラグラフ・スリー
バック・パラグラフ・スリー
フォア・パラグラフ・ダブルスリー
バック・パラグラフ・ダブルスリー
フォア・パラグラフ・ループ
バック・パラグラフ・ループ
フォア・パラグラフ・ブラケット
バック・パラグラフ・ブラケット

関連項目

スペシャルフィギュア

外部リンク

JOCスケートの歴史
大阪大学体育会フィギュアスケート部 コラム コンパルソリーのお話 - ウェイバックマシン
* 『運動年鑑. 昭和17年度 附録』 - 国立国会図書館デジタルコレクション 朝日新聞社体力部 編「フィギュアスケーティングに於けるスクール・フィギュア」 pp.213-221

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