コンプリート・トム・ベル・セッションズ

『コンプリート・トム・ベル・セッションズ』は、エルトン・ジョンが1989年にリリースしたアルバムです。この作品は、日本では未発売ですが、音楽ファンには注目される一枚です。実は、このアルバムは1977年に制作され、その後長い間お蔵入りとなっていた音源を集めたもので、フィリー・ソウルの権威であるトム・ベルにプロデュースを依頼して製作されました。

当初のリリースは、いくつかのシングルのみでありましたが、1979年には3曲入りのミニアルバム『トム・ベル・セッションズ』として初めてパッケージ化されました。このミニアルバムは、その後の本アルバムの土台となっています。1989年には、初出の曲として「愛の輝き」が追加され、改めて世に出ることになりました。興味深いことに、「愛の輝き」はその後、エルトン・ジョンのアルバム『シングル・マン』にも別バージョンが収録されています。これにより、彼の音楽キャリアでの試行錯誤が伺えます。

特に「Are You Ready For Love」という曲は、2003年にイギリスのクラブシーンで再度注目を集め、ヒットを記録しました。この曲は、ロングバージョンの12インチシングルもリリースされ、様々なリミックスが作られるなど再評価されました。そして、30年近くを経て初めてシングルチャートの一位を獲得するという珍事も引き起こしました。このように、過去の音源が時間を経て新たな評価を受ける例は珍しいものですが、エルトン・ジョンの音楽にはそのような例が多々あります。

収録曲

本アルバムには、以下の曲が収録されています（邦題は1970年代のシングル盤による）:

1. ナイス・アンド・スロウ - Nice and Slow
2. カントリー・ラヴ・ソング - Country Love Song
3. 愛の輝き - Shine on Through
4. キャント・バイ・ユー・ラブ - Mama can't buy you love
5. 恋にご用心 - Are you ready for love
6. 恋愛事件 - Three way love affair

この中で、曲の作詞は各曲ごとに異なり、バーニー・トーピンやゲイリー・オズボーン、キャシィ・ジェイムズといった著名な作詞家が名を連ねています。また、作曲においても、エルトン・ジョン自身の名前のほか、トム・ベルやリオイ・M・ベルの名前がみられます。

参加ミュージシャン

このアルバムの制作には多くの優れたミュージシャンが関わっています。特に、トム・ベルがキーボードを担当し、トニー・ベルがギター、バックボーカルを、ボビー・エリがギターを担当しました。名だたる音楽家たちが集まり、その結果としてクオリティの高い音楽が生まれました。

- Thom Bell - Keyboards
- Tony Bell - Guitars, Backing Vocal
- Bobby Eli - Guitars
- Bob Babbit - Bass
- Charles Collins - Drums
- Larry Washington - Percussions

また、バックボーカルとしては、Bill Lamb、Barbara Ingram、The Spinnersなどが参加しており、厚みのあるサウンドを生み出しています。

製作陣

アルバムのプロデューサーとしてトム・ベルが携わり、彼の経験とタレントが十分に発揮されています。また、ドン・マリーがチーフエンジニアとして音響面を支えており、ジョン・リード、スティーヴ・ブラウン、コニー・ヒルマンなどが管理を担当しました。これらの要素が重なり、エルトン・ジョンの音楽は独自のスタイルを確立しました。

『コンプリート・トム・ベル・セッションズ』は、エルトン・ジョンのキャリアにおいて重要な位置を占める作品の一つであり、過去の名曲が新たな形で再評価される貴重なアルバムです。

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