コヴェントリー・ビルディング・ソサエティ・アリーナ

コヴェントリー・ビルディング・ソサエティ・アリーナは、イングランド中部のウェスト・ミッドランズ州、コヴェントリー市に位置する大規模スタジアムです。正式名称はThe Coventry Building Society Arenaで、収容人数は32,500人を誇ります。主にサッカークラブであるコヴェントリー・シティFCが、2005年の開場以来ホームスタジアムとして使用しています。スタジアムの命名権はコベントリー・ビルディング・ソサエティが10年契約で取得しており、以前はリコー・アリーナ（Ricoh Arena）として知られていました。

このスタジアムの建設は、コヴェントリー北部地域の再開発計画の一環として、市の主導で行われました。建設の背景には、コヴェントリー・シティFCが長年使用してきたハイフィールド・ロードスタジアムの老朽化に伴う閉鎖がありました。1899年から106年間にわたりクラブの本拠地であった施設の代替として、新たなランドマークとなる現代的なスタジアムが求められたのです。

単なるスポーツ競技場にとどまらないのが、このアリーナの最大の特徴です。スタジアム機能に加え、多岐にわたる施設が一体となった「複合型スタジアム」として設計されています。施設内には、世界有数の売上高を誇るテスコの大型ショッピングセンターや、カジノ、ホテル、フィットネスクラブなどが併設されています。また、コヴェントリー市内に不足していたコンベンションセンターやカンファレンスルームも備えており、大規模な会議やイベントの開催にも対応可能です。これらの商業・娯楽・ビジネス施設が充実していることで、試合開催日以外でも多くの人々が集まる活気あふれる拠点となっています。

地域社会への貢献も重要な側面です。地元の子どもたちを対象とした教育指導やIT教育プログラムを提供しているほか、16歳から18歳程度の若者向けにスポーツビジネスに関する実践的な教育プログラムも実施しています。このように、スポーツ、商業、エンターテイメント、教育といった多様な要素を組み合わせた運営モデルは、複合型スタジアムの成功例として世界中から注目を集めています。

スポーツイベント以外では、大規模コンサート会場としても利用されており、ブライアン・アダムス、ボン・ジョヴィ、レッド・ホット・チリ・ペッパーズといった世界的アーティストのライブが開催されています。また、国際的なスポーツ大会の会場としても重要な役割を果たしています。2012年のロンドンオリンピックでは、サッカー競技の会場として男女合わせて12試合が開催されました。2022年の英連邦大会では、スタジアムで7人制ラグビーが、併設されたアリーナでは柔道とレスリングが行われています。ただし、国際オリンピック委員会（IOC）は、会場名称に企業名が含まれることを認めていないため、オリンピック期間中は「シティ・オブ・コヴェントリー・スタジアム（City of Coventry Stadium）」という名称が使用されました。

入場者数に関しても、ハイフィールド・ロード時代の平均入場者数（例: 2004-2005シーズンの16,048人）と比較して、リコー・アリーナ開場初年度の2005-2006シーズンには平均21,302人と大きく増加しました。その後、多少の変動はあるものの、多くの観客を集めています。最多入場者数記録は、様々なスポーツイベントで樹立されています。ラグビーユニオンの試合では、ワスプス対レスター・タイガース戦（2015年5月9日、プレミアシップ・ラグビー）の32,019人や、ワスプス対バース戦（2018年12月23日）の31,626人が記録されています。サッカーの試合では、コヴェントリー・シティ対チェルシーのFAカップ準々決勝（2009年3月7日）で31,407人、コヴェントリー・シティ対クルー・アレクサンドラのEFLトロフィーエリア決勝（2013年2月5日）で31,054人、U-21イングランド対U-21ドイツのUEFA U-21欧州選手権予選（2006年10月6日）で30,919人など、多くの観客が来場しています。これらの記録は、スタジアムがコヴェントリーだけでなく、周辺地域にとっても重要なイベント会場であることを示しています。

コヴェントリー・ビルディング・ソサエティ・アリーナは、現代のスタジアムが持つべき多様な機能を見事に融合させた施設として、スポーツファンだけでなく、地域住民や来訪者にとって魅力的な複合施設となっています。その成功事例は、今後のスタジアム開発におけるモデルケースとしても注目されています。

もう一度検索