コーザ・ノストラ (映画)

『コーザ・ノストラ』(原題:Lucky Luciano)は、1973年にイタリア、フランス、アメリカ合衆国で共同制作された犯罪映画です。この作品は、アメリカにおけるイタリア系マフィア組織、コーサ・ノストラの創設者であり、その頂点に君臨したとされるラッキー・ルチアーノの生涯を描いています。特に焦点を当てているのは、第二次世界大戦後にイタリアへ強制送還された後のルチアーノの人生です。

監督を務めたのは、イタリア・ヌーヴェルヴァーグを代表する巨匠、フランチェスコ・ロージ。彼は、ルチアーノの生涯を、単なる犯罪者の物語としてではなく、歴史的・社会的な文脈の中で捉え、複雑な人物像を描き出そうとしています。ルチアーノの冷酷さとカリスマ性を併せ持つ魅力、そして、彼の行動がアメリカ社会に与えた影響、更には彼の壮絶な人生の影の部分をも、リアルに、そして重厚に描いている点が、この映画の大きな特徴です。

主演のラッキー・ルチアーノ役には、イタリアを代表する名優ジャン・マリア・ヴォロンテが起用されています。ヴォロンテは、ルチアーノの知略と冷酷さを巧みに演じ分け、観る者を圧倒する存在感を放っています。また、脇を固めるキャストも豪華な顔ぶれです。ロッド・スタイガー、チャールズ・シラグーサ、エドモンド・オブライエン、ヴィンセント・ガーディニアといったベテラン俳優たちが、それぞれの役どころで、映画に深みと重厚感を与えています。

物語は、ルチアーノがイタリアへ強制送還された後から始まります。彼は、かつての仲間たちとの関係、イタリア政府との駆け引き、そして、アメリカからの捜査当局の監視の中で、生き残りをかけ、様々な策略を巡らせます。彼の策略は、時に成功し、時に失敗し、その過程で、彼の周りの人間たちが、様々な形で運命を辿っていく様子が描かれます。

この映画は、単なるマフィア映画の枠を超えた、人間の業と社会構造、そして歴史の複雑さを映し出す、重厚で奥深い作品です。ルチアーノの生涯を通して、権力、裏切り、忠誠心、そして人間の脆さといった普遍的なテーマが描かれており、観る者それぞれが、様々な解釈をすることができるでしょう。1970年代に製作された映画とは思えないほどの高い完成度と、名優たちの演技、そして、時代背景を巧みに織り交ぜたストーリー展開は、現代においても、多くの視聴者を魅了し続けることでしょう。

日本の公開では、NETテレビの「日曜洋画劇場」で1976年10月3日に放送されました。吹き替え版では、ラッキー・ルチアーノ役に中丸忠雄、ジーン・ジャンニーニ役に富田耕生、そして、チャールズ・シラグーサ捜査官役に大木民夫といった、当時を代表するベテラン声優陣が起用され、映画の魅力をさらに高めています。この吹き替え版も、多くのファンに愛されていると言えるでしょう。

『コーザ・ノストラ』は、マフィア映画としてだけでなく、人間のドラマとしても、そして歴史を学ぶ上でも、非常に価値のある作品です。もし、機会があれば、ぜひ一度ご覧になってみてください。

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