コールサック

コールサック

コールサックは、南天の空に位置する星座、みなみじゅうじ座の近くに見られる、非常に広大で目立つ暗黒星雲です。暗黒星雲とは、星間空間に漂うガスや塵が濃密に集まった領域のことで、これらの物質が背景にある星からの光や、より遠くの天体からの光を吸収したり散乱させたりするため、あたかもそこだけぽっかりと穴が開いたかのように暗く見えます。特にコールサックは、私たちの銀河系中心方向にあたる、明るく輝く天の川の星々を背景としているため、その漆黒の姿が際立ち、夜空の美しいコントラストを生み出しています。

この巨大な暗黒星雲は、天球上でおよそ7度×5度という広大な範囲にわたって広がっており、その一部はみなみじゅうじ座だけでなく、隣接するケンタウルス座やはえ座の領域にも食い込んでいます。南半球では夜空の非常に特徴的な一部として、文字による歴史が始まるはるか以前から、人々に認識されてきたと考えられています。

近代において、ヨーロッパの探検家によってその存在が記録されたのは、1499年のことでした。航海士のビセンテ・ヤーニェス・ピンソンが、この暗黒星雲を観測した最初のヨーロッパ人と言われています。その後、探検家のアメリゴ・ヴェスプッチは、この暗い領域を「暗いカノープス」を意味するイタリア語の「il Canopo fosco」と呼びました。また、南半球の夜空に見える明るい衛星銀河であるマゼラン雲と対比させる形で、「マゼランの斑点」を意味するラテン語の「Macula Magellani」や、「黒マゼラン雲」といった別名でも言及されました。これは、明るいマゼラン雲が星の集まりであるのに対し、コールサックが光を遮る暗い領域であることから、その対照的な性質を示しています。

長らく、コールサックはその名の通り、完全に光を遮断する真っ黒な領域だと考えられていました。しかし、1970年に天文学者K. Mattilaが行った研究によって、この領域は完全な暗黒ではないことが科学的に証明されました。実際には、星雲を構成する塵の粒子が、周囲にある星の光をわずかに反射しており、その微弱な反射光によって、コールサックの明るさは周囲の天の川の明るさのおよそ10パーセント程度であることが明らかになりました。これは、コールサックが単なる「穴」ではなく、宇宙空間に存在する物理的な物質の集まりであることを示唆しています。

有名な天体カタログの一つであるニュージェネラルカタログ（NGC）には、コールサックは個別の天体として登録されていません。しかし、パトリック・コールドウェルが作成したアマチュア天文家向けのカタログであるコールドウェルカタログには、Caldwell 99という番号で掲載されています。

コールサックは、南半球の夜空においては、みなみじゅうじ座の明るい星々と共に非常に見つけやすい対象であり、その印象的な姿は多くの人々に親しまれています。宇宙の広大さと、そこに存在する多様な構造を、肉眼でも感じさせてくれる天体の一つと言えるでしょう。

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