はえ座

はえ座 (Musca)

概要

はえ座は、現代の88星座の一つであり、16世紀末に考案された新しい星座です。この星座はハエをモチーフとしており、天の南極に近い位置に存在していますが、日本の南大東島より北の地域からは見ることができません。

主な天体

はえ座はそれほど大きな星座ではありませんが、いくつかの注目すべき天体が含まれています。特に、2つの3等星であるα星（見かけの明るさ2.649等のケフェウス座β型の脈動変光星）とβ星（明るさ3.06等のB型主系列星の連星系）は特に明るく見えます。また、脈動変光星の中で最も明るいα星は、はえ座において最も目立つ恒星です。

さらに、6等星のθ星も存在し、三重連星系を形成しています。この星では、ウォルフ・ライエ星とO型主系列星が連星として動いている姿が確認されており、興味深い天体観測の対象となっています。

また、コールドウェルカタログに選ばれた2つの球状星団（NGC 4372とNGC 4833）や、太陽系における星形成領域の一つであるDark Doodad nebulaも、この星座に位置しています。さらに、1907年にウィリアミーナ・フレミングによって発見されたIC 4191という惑星状星雲もあり、星座の中で多様な天体を楽しむことができます。

由来と歴史

はえ座の起源は、オランダの航海士ペーテル・ケイセルとフレデリック・デ・ハウトマンの1595年から1597年にかけての観測記録に遡ります。この観測記録を基に、オランダの天文学者ペトルス・プランシウスが1598年に天球儀を製作しましたが、星座名は記載されていませんでした。

その後、1600年と1601年にはホンディウスが製作した天球儀でも同様に昆虫の姿が描かれたものの、名称の記載はありませんでした。これに対し、ウィレム・ブラウは1602年に製作した天球儀に「Musca」を記載し、その姿をカメレオンに襲われるハエとして描写しました。この時点で「Musca」という名称が使われるようになります。

さらに、デ・ハウトマンの1598年から1602年にかけての観測を参考に、1603年に出版された星表ではハエは「De Vlieghe」として記されています。後にバイエルの『ウラノメトリア』での「Apis」表記が誤解を招きましたが、プランシウスによって1612年に「Muia」が正式に命名され、この星座の名称は定まっていくことになります。

結果的に、17世紀初頭から18世紀にかけてはえ座は「ハエ」と見做される一方で、他の昆虫との混同が続きました。各天文学者による観測や製作の記録が混在し、星座名の確定が長引いてしまったのです。最終的にフランシス・ベイリーが1845年に整理した際に、南天の昆虫は「Musca」として統一され、これが現在の名称となりました。

1922年には国際天文学連合 (IAU) によって、はえ座が正式に88星座の一つとして設立され、星座名がMuscaと正式に決定されました。新しい星座に伴う神話や伝承は存在しませんが、そのユニークな歴史は特筆に値します。

中国におけるはえ座

はえ座の領域は、中国の王朝の天文学的視点から見ることができなかったため、三垣や二十八宿にも含まれませんでした。はえ座の最初の記録は明朝の天文書『崇禎暦書』において、星々が「蜜蜂」という星官に配されているとのことです。

呼称や方言

日本では、歴史的に「南蠅」や「北蠅」と区別されていましたが、最終的に「はえ」という名称が定まったのは1990年代以降です。中国語では「蒼蠅座」と呼ばれています。

まとめ

はえ座は、独自の名称や多様な天体が集まっている非常に興味深い星座です。その歴史的背景も含めて、星座を観測する人々に新たな発見を促し続けています。

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