コーンウォール公領

コーンウォール公領：イギリス王室を支える独自の公領

コーンウォール公領は、イギリス南西部のコーンウォール地方を中心に広がる広大な土地と資産を所有する、イギリス王室に属する二つの公領の一つです。もう一つはランカスター公領です。イギリス君主の長男が王位継承者である場合、その出生時または親の王位継承と同時に、コーンウォール公の爵位とともに相続されます。

独自の法的権利と特権

コーンウォール公領は、イギリス国内の他の土地とは異なる特別な法的権利と特権を有しています。コーンウォール公は、公領内の多くの役人を任命する権限を持ち、シリー諸島の主要港の港湾当局としても機能します。公領は、イギリス王室とは独立した運営を行い、独自の財政管理システムを持っています。

具体的には、公領は550平方キロメートルを超える土地を所有しており、その多くはコーンウォール以外の地域（デボン州、ヘレフォードシャー、サマセットなど）に広がっています。また、金融投資ポートフォリオも保有しています。公領の運営は、1838年のランカスター・コーンウォール公領法によって規定されており、財務省の監督を受け、収支報告書を議会に提出する義務があります。

さらに、公領には「無主物」に対する特別な権利があります。所有者のいない財産は、コーンウォール公領に帰属し、2007年には13万ポンド相当の無主物が慈善基金に寄付されました。

歳入と相続

コーンウォール公領の主な目的は、王位継承者に収入を提供することです。2011年王室助成金法の成立により、2012年からは、コーンウォール公領の収益は、相続人がコーンウォール公であるかどうかに関わらず、王位継承者に渡ることになりました。ただし、未成年者の場合は、収益の10％が本人に渡り、残りは英国王室に移されます。

コーンウォール公は、公領資産の「占有での信託受益権」を有しており、純利益を得ることはできますが、資産を自由に売却することはできません。

税制上の扱いと議論

イギリス政府はコーンウォール公領を英国王室機関とみなしており、法人税を課税していません。しかし、この税制上の優遇措置には、批判の声もあります。現コーンウォール公（チャールズ3世）は、1993年以降、自発的に所得税を納めています。

2017年から2018年にかけて、コーンウォール公領は2170万ポンドの歳入を生み出しました。この歳入は、コーンウォール公の公的活動や慈善活動、そして他の王族の活動費用に充てられました。

歴史

コーンウォール公領は1337年、エドワード3世によって創設されました。当初は、コーンウォール公爵位と、それを支える土地と資産で構成されていました。その後、幾度かの変遷を経て現在の規模となっています。1502年にはプリンス・カウンシル（公領評議会）が廃止されましたが、1611年に復活しました。1649年の王政廃止後は議会管理下に置かれましたが、1660年の王政復古で王室に戻されました。19世紀には、アルバート公の積極的な経営によって、公領の収益は飛躍的に向上しました。

近代以降

1975年、チャールズ皇太子はコーンウォール公慈善基金を設立しました。近年では、パウンドベリー（ドーセット州）やナンスルダン（コーンウォール州ニューキー）などの大規模な開発プロジェクトにも関わっています。また、公領は、環境保護活動にも積極的に取り組んでいます。

保有不動産

コーンウォール公領は、23のカウンティにわたって、農地、住宅地、商業地など、多様な不動産を所有しています。これらの不動産は、歴史的背景に基づいて、アンティクア・マネリア、フォリンセカ・マネリア、アネクサタ・マネリアの3つのグループに分類されています。

法的地位と追加権限

コーンウォール公領は、他の土地にはない特別な法的権利を有しています。例えば、無主物に対する権利や、コーンウォールの海岸線と河川に関する権利などです。また、コーンウォールの執政長官は、コーンウォール公によって任命されます。

公領の法的立場や税制上の扱いについては、依然として議論が続いています。一部の活動家は、公領の透明性を高め、公的監査を強化する必要性を訴えています。

まとめ

コーンウォール公領は、歴史と伝統、そして独自の法的権利と特権を持つ、イギリス王室にとって重要な存在です。その運営や法的立場については、議論や課題が残されていますが、王位継承者への収入提供、地域社会への貢献、そして歴史的資産の保全という重要な役割を果たし続けています。

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