ゴシキヒワ

ゴシキヒワ：色彩豊かで美しい歌声を持つ小鳥

ゴシキヒワ（学名： Carduelis carduelis）は、スズメ目アトリ科に属する小型の鳥です。ヨーロッパ、北アフリカ、中央アジアの平地や低山地帯に広く分布し、温和な気候の地域を好みます。寒冷地帯に生息する個体群は冬に渡りを行うこともありますが、気候変動によっては西側の個体群も局所的に渡りをします。オーストラリア南東部やニュージーランドなどでは、飼育個体が野生化して定着している例もあります。日本では迷鳥として観察されることがありますが、愛玩鳥として輸入されているため、飼育個体が野生化した可能性も否定できません。

形態

体長は12～13cm、翼長は21～25cm、体重は14～19gと小型です。雌雄の差異はそれほど顕著ではありませんが、オスの方が顔の赤黒い部分（仮面のような模様）が大きく、メスでは目が赤みに覆われません。頭部は黒と白、背面は赤褐色、腹面は白で、脇腹と胸には淡黄色の斑点があります。翼は黒と黄色い模様が入り、非常に美しい色彩をしています。くちばしはアイボリー色で長く、先端が尖っています。尾は二股に分かれています。

幼鳥は成鳥とは異なる羽色をしており、頭部は無地で背面の灰色は成鳥より濃くなりますが、翼の黄色い模様は共通しているため識別可能です。また、中央アジア産の亜種(C. c. caniceps)は、ヨーロッパ産などの亜種に見られる頭部の黒と白の模様がなく、顔の赤紋以外は灰色をしています。一年目の個体では、くちばしが白っぽく、先端が灰色がかったり黒くなっている特徴があります。

生態

ゴシキヒワは主にアザミやナベナなどの植物の種子を食べて生活する種子食性の鳥です。繁殖期には、雛のエサとして昆虫なども捕食します。冬は餌場によく姿を現します。営巣は広葉樹の高い梢で行われ、4～6個の卵を産み、11～14日間抱卵します。

ゴシキヒワは、澄んだ美しい声でさえずることでも知られています。「ツィリリ、ツィリリ、ツィリリ」という特徴的な三音節のフレーズがさえずりの特徴です。

亜種

ゴシキヒワは大きく2つのグループに分類され、さらにいくつかの地域個体群に分けられています。分布域の境界付近では、両グループの中間的な特徴を持つ個体も見られます。C. c. caniceps は羽色が明らかに異なるものの、独立種とはみなされていません。

Carduelis carduelis carduelis グループ
C. c. balcanica（ヨーロッパ南東部）
C. c. brevirostris（クリミア半島、北コーカサス）
C. c. britannica（イギリス諸島）
C. c. carduelis（ヨーロッパ主要部、スカンジナビア半島）
C. c. loudoni（南コーカサス、イラン）
C. c. major（西シベリア）
C. c. niediecki（南西アジア、北東アフリカ）
C. c. parva（大西洋諸島、イベリア半島、北西アフリカ）
C. c. tschusii（コルシカ島、サルジニア島、シシリー島）

Carduelis carduelis caniceps グループ
C. c. caniceps（中央アジア南部）
C. c. paropanisi（アフガニスタンからヒマラヤ山系西側、天山山脈）
C. c. subulata（中央シベリア南部）

なお、リンネは当初ゴシキヒワを Fringilla 属に分類し、学名を Fringilla carduelis と命名していました。

人間との関係

愛玩鳥

ゴシキヒワは、美しい姿とさえずりから、世界中で愛玩鳥として飼育されています。オスのゴシキヒワとメスのカナリアを交配させ、より美しいさえずりを奏でる交雑種（ミュール）を作る試みも行われています。このような交雑種は日本にも輸入されており、「ハイブリッド」と呼ばれて販売されています。

民俗

キリスト教において、受難の象徴とされるアザミの種子を食べることから、ゴシキヒワもキリストの受難の象徴として用いられることがあります。絵画では聖母子像に頻繁に登場し、キリストの受難を暗示する象徴として描かれることもありました。忍耐、豊穣、継続の象徴としても用いられ、救世主や疫病よけのお守りとしても信仰の対象となっていました。

ゴシキヒワをモチーフにした作品

アントニオ・ヴィヴァルディ作曲のフルート協奏曲ニ長調『五色ひわ』RV.428などがあります。

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