アトリ科

アトリ科（学名: Fringillidae）は、スズメ目に分類される鳥類の科であり、その多様な種は世界中で観察することができます。アトリ科は、分類学的にアトリ亜科 Fringillinae とされることもあります。

アトリ科という名前は、一般的にはアトリ（花鶏・臘子鳥・獦子鳥）という鳥を指しますが、広義にはアトリ科に属する様々な鳥の総称としても用いられます。アトリ科の鳥は、南極大陸を除くほぼ全世界に生息しており、その生息範囲の広さが特徴です。

系統と分類

アトリ科の系統分類は、分子系統解析の結果に基づいて見直されてきました。Klicka et al. (2007) や Weir et al. (2009) などの研究により、アトリ科の系統樹が提唱されています。これらの研究では、nine-primaried oscine（9枚の初列風切を持つ鳴禽類）というグループと、ヒワ亜科の単系統性が重視されています。

アトリ科は、nine-primaried oscine に属する科の一つであり、このグループは大きく2つの系統に分かれます。アトリ科は主に旧世界に分布し、その姉妹群である広義のホオジロ科は主に新世界に分布しています。

かつては、nine-primaried oscine 全体をアトリ科として分類し、様々な亜科に分割していました。その後、ホオジロ科が分離され、さらにホオジロ科は複数の科に分割されました。しかし、Sibley & Ahlquist (1990) は、再びアトリ科を広義に捉え、アトリ亜科 Fringillinae とホオジロ亜科に分けました。狭義のアトリ科はいくつかの亜科に分かれますが、Sibley & Ahlquist 以降の広義のアトリ科の中では、アトリ亜科は族として扱われます。

アトリ科の中で最初に分岐したアトリ亜科は、基底的な単型亜科であり、アトリ属のみで構成されています。スミレフウキンチョウ亜科は、伝統的にフウキンチョウ科 Thraupidae に分類されていたスミレフウキンチョウ属 Euphonia とミドリフウキンチョウ属 Chlorophonia の2つの属からなります。残りのヒワ亜科は、アトリ科の属と種の大部分を含んでいます。

歴史的に、アトリ亜科は広義のアトリ科内の様々な昆虫食グループを含んでいました。現在では、ヒワ亜科をアトリ亜科に含めることがありますが、この広義のアトリ亜科は側系統となります。

ハワイ固有の鳥類群であるハワイミツスイ類は、伝統的にハワイミツスイ科 Drepanididae として扱われてきましたが、現在ではアトリ科に統合されています。ハワイミツスイ亜科 Drepanidinae として独立した亜科とする分類もありますが、系統的にはヒワ亜科に含まれると考えられています。

アトリ科の分類は、分子系統解析の結果や形態学的特徴に基づいて、常に変化しています。今後の研究によって、アトリ科の系統関係や分類がさらに明確になることが期待されます。

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