ゴットフリート・フォン・アイネム

ゴットフリート・フォン・アイネム（1918年1月24日 - 1996年7月12日）は、20世紀を代表するオーストリアの作曲家です。彼は、保守的な音楽様式を基盤としながらも、ジャズやイーゴリ・ストラヴィンスキー、セルゲイ・プロコフィエフといった同時代の音楽家からの影響も受け、独自の作風を確立しました。特にオペラやバレエといった劇音楽の分野でその才能を発揮し、後世に多くの作品を残しました。

生涯

アイネムは、スイスのベルンでオーストリア軍駐在武官の息子として誕生しました。幼少期をドイツで過ごした後、ベルリンに移り、作曲家ボリス・ブラッハーに師事しました。1938年からはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団でコレペティトールとして活動。この頃、ヴェルナー・エックの勧めによりバレエ音楽『トゥーランドット姫』を作曲し、作曲家としてのキャリアをスタートさせました。1944年にはドレスデン歌劇場の音楽アドバイザーに就任。

1947年のザルツブルク音楽祭で上演されたオペラ『ダントンの死』は、アイネムの名を一躍有名にしました。その後、ウィーンに移り、ウィーン国立歌劇場の芸術顧問、ウィーン音楽院の教授、オーストリア音楽アカデミーの会長など、音楽界の要職を歴任しました。晩年は、ニーダーエスターライヒ州の森林地区で静かに暮らしました。

私生活では、最初の妻に先立たれた後、劇作家のロッテ・イングリッシュと再婚。後期のオペラ作品は、彼女が台本を手掛けたものが多くあります。また、先妻との息子であるカスパー・アイネムは、オーストリア社会民主党の政治家として活躍しました。アイネムは、ナチス時代に音楽家コンラート・ラーテの命を救った功績により、イスラエル政府から「諸国民の中の正義の人」の称号を贈られています。

作風

アイネムの音楽は、ウィーンの保守的な音楽伝統を受け継ぎ、乾いたリズムと確固とした旋律が特徴です。初期には調性の逸脱も見られましたが、次第に調性音楽へと回帰。晩年には、古典音楽の要素を取り入れた作品も手がけました。しかし、その根底には常に劇音楽の作曲家としての視点があり、叙情的な旋律と力強い表現力が、彼の音楽の魅力を形作っています。特に、オペラやバレエにおいて、その才能は遺憾なく発揮されました。和声は簡素化される傾向にありましたが、旋律の表現力は常に高く評価されました。

主要作品

アイネムは、オペラ、バレエ、交響曲、管弦楽曲など、幅広いジャンルで作品を残しました。

オペラ：『ダントンの死』、『審判』、『老婦人の訪問』、『企みと恋』、『イエスの婚礼』など。
バレエ：『トゥーランドット姫』、『メドゥーサ』など。
交響曲：『フィラデルフィア交響曲』など。
管弦楽曲：『ブルックナー・ディアローグ』、『管弦楽のためのカプリッチョ』など。

参考文献

Dominik Hartmann: Gottfried von Einem. Verlag Lafite, Wien 1967

エピソード

1993年、NHK教育テレビジョンで、同じ出版社に所属する作曲家ユン・イサン、評論家浅田彰との鼎談に出演。これは、20世紀を代表する作曲家たちの貴重な意見を記録した映像として、高く評価されています。

外部リンク

ゴットフリート・フォン・アイネム音楽財団

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