ゴットフリート4世 (下ロートリンゲン公)

ゴットフリート4世は、11世紀に下ロートリンゲン公およびトスカーナ辺境伯を務めた人物です。彼は「せむし公」という異名を持ち、その生涯は当時の政治的、宗教的な対立に深く関わっていました。

生い立ちと結婚
ゴットフリート4世は、1040年頃にアルデンヌ家のロートリンゲン公ゴットフリート3世と最初の妻ドダの間に生まれました。1054年、父ゴットフリート3世がトスカーナ辺境伯ボニファーチオ4世の未亡人ベアトリクスと再婚した際、ゴットフリート4世はベアトリクスの連れ子であるマティルデと婚約しました。父の死後、1069年にマティルデと結婚し、夫婦はロートリンゲンで生活を始めました。

結婚生活と対立
しかし、結婚生活は長くは続きませんでした。1071年頃に生まれた男子が早世すると、マティルデは翌1072年に母ベアトリクスのいるマントヴァに戻りました。ゴットフリート4世は同年の秋にマティルデを訪ねるものの、1073年8月には一人でロートリンゲンに戻りました。この間、夫婦の間には不和が生じていたと考えられます。

マティルデはローマ教皇グレゴリウス7世を強く支持していましたが、ゴットフリート4世は教皇と対立する神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世を支持していました。この政治的、宗教的な対立が、夫婦関係に大きな影響を与えたことは想像に難くありません。1076年1月24日にヴォルムスで開催された帝国集会では、多くの有力諸侯が欠席する中、ゴットフリート4世はハインリヒ4世の側に立って参加しました。これは、彼が皇帝支持の立場を明確に示した行動でした。

暗殺とその後
1076年、ゴットフリート4世はフラールディンゲンで暗殺されました。この暗殺の背後には、教皇派の陰謀があったとも、妻マティルデによる毒殺であったとも噂されましたが、真相は不明です。彼の死後、後継者問題が起こりました。ゴットフリート4世には子供がいなかったため、姉妹イダとブローニュ伯ウスタシュ2世の息子であるゴドフロワ・ド・ブイヨンが後継者とされました。しかし、下ロートリンゲン公の地位は皇帝ハインリヒ4世の次男コンラートに与えられ、ゴドフロワ・ド・ブイヨンは1087年になってようやく下ロートリンゲン公となります。

ゴットフリート4世の生涯
ゴットフリート4世の生涯は、当時のヨーロッパにおける権力闘争や宗教的対立を象徴しています。彼は、神聖ローマ皇帝とローマ教皇の対立という複雑な状況の中で、自身の立場を貫き通しましたが、それが悲劇的な結末を招いたと言えるでしょう。彼の死後、下ロートリンゲン公の地位は一時的に皇帝の手に渡り、最終的に後継者であるゴドフロワ・ド・ブイヨンが公位を継承するまでには、時間を要しました。ゴットフリート4世の生涯は、中世ヨーロッパ史における重要な一コマとして、歴史に刻まれています。

参考文献
山辺規子「カノッサ家の盛衰 : 中世中期・北イタリアの貴族家系の一例」『研究年報』第37巻、奈良女子大学文学部、1994年3月、83-100頁
藤沢道郎『物語イタリアの歴史 : 解体から統一まで』中央公論社〈中公新書〉、1991年。
* 成瀬治他編 『世界歴史大系 ドイツ史 1』山川出版社、1997年。

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