ゴトン・ロヨン

ゴトン・ロヨンの意義と背景

ゴトン・ロヨン（gotong royong）は、インドネシア、特にジャワに根付く村社会の自発的な相互扶助のシステムを指します。この言葉は、ジャワ語の「gotong（持ち運ぶ）」と「rojong（一緒に、集まって）」に由来し、協力して物事を行うことを表現しています。この文化は、村人たちが共に集まり、助け合う事を重要視しています。

デサとゴトン・ロヨンの関係

ジャワの農耕社会において、村（デサ）は共同体の重要な基盤を形成しています。この地域では、村人たちが集まって決定を下す「ムシャワラ」、全員の合意を求める「ムファカット」といった伝統が重んじられ、これが村のルール（アダット）として機能します。これらの慣習は、ゴトン・ロヨンの概念と深い関わりがあります。具体的には、村人たちが共同で作業をすることで結びつきを強め、個々の協力が地域全体の発展につながるという考え方です。なぜなら、相互に支え合うことによって強固な社会的な絆が生まれるからです。

ゴトン・ロヨンの政治的側面

ゴトン・ロヨンは、インドネシアの独立以降、政治の世界でも重要な役割を果たしました。建国の父、スカルノは、西洋式の議会制民主主義をそのまま導入することに異を唱え、インドネシア独自の価値観としてゴトン・ロヨンを強調しました。この思想は、国家の基本的な原則であるパンチャシラの核としても位置付けられています。

特に1960年代には、スカルノの政権下で「ゴトン・ロヨン内閣」という概念が生まれ、インドネシア共産党と他の勢力を取り込んだ政府組織として機能しました。最近では、メガワティ政権が発足した際に、イスラム勢力の取り込みをもとに「ゴトン・ロヨン内閣」と称されるなど、相互扶助の考えが政治の場においても重要視され続けています。

結論

ゴトン・ロヨンは、単なる文化的慣習にとどまらず、インドネシアの社会構造や政治思想にも深く根づいている重要な概念です。この相互扶助の精神は、村人たちの結束を強化し、社会全体の調和を図る要素として機能しています。したがって、ゴトン・ロヨンはインドネシアのアイデンティティの一部として今なお大切にされているのです。

関連項目

• - 結い: 日本の村における相互扶助の慣習
• - 互酬: 互いに助け合う行為

参考文献

セロ・スマルジャン、ケンノン・ブリージール『インドネシア農村社会の変容―スハルト村落開発政策の光と影』 明石書店、2000年。

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