互酬

互酬（ごしゅう）とは

互酬は、相手に助けを与えた際、その恩に対して必ずお返しが返ってくるという期待に基づく社会的な相互作用を指します。また、贈り物を贈った場合には、それに対する返礼を行うことが求められるといった文化的なルールが存在します。この概念は、文化人類学や経済学、社会学において重要視され、互酬性とも呼ばれることがあります。

概要

互酬は集団内での財やサービスの対称的な移動を基盤としており、「ギブ・アンド・テイク」の概念が成り立ています。互酬が行われることで、送り手と受け手の立場は、シチュエーションが変わると入れ替わる場合があるのです。例えば、ある場面では贈る側であった人が、別の場面では贈られる側になるということです。

複数の集団が互酬を行う場合、これらの集団は対称的なサブグループを形成し合うことが多く、3つ以上の集団が参加することもあります。この場合、互酬は直接的ではなく、類似の関係にある他のサブグループとの間で行われることが一般的です。経済組織が親族に基づく集団に統合されている場合、互酬は主に親族間で発生し、その関係は複雑になることがあります。

カール・ポランニーはこの互酬を、再配分や交換と並ぶ社会統合の主要なパターンの一つとして位置づけています。また、マーシャル・サーリンズは、互酬を「一般化された互酬」「均衡のとれた互酬」「否定的な互酬」といったカテゴリーに分けて、その実態を分析しています。

具体的な事例

贈与

互酬の一例としては、贈与とそれに対する返礼が挙げられます。例えば、祭りや結婚式、葬儀の場などでは贈り物が行われ、それによって社会的地位が維持されることが重要とされています。アメリカの先住民族におけるポトラッチや、ヴァイキングによる威信財の贈与などはその典型的な例です。

婚姻

婚姻における互酬的な側面も重要です。例えば、ニューギニアのバナロ族やアフリカのティブ族では、複数のカップルが同時期に婚姻を行い、相互の親族関係が形成されます。これにより、贈与や労働などの互酬的な活動が緊密に結びつくことになります。

労働

労働に関連する互酬の事例には、ダホメ王国のドックプウェやインドネシアのゴトン・ロヨン、日本の結の制度が存在します。さらに、トロブリアンド諸島では畑作の作業が、メンバーや労働の性質により五つのカテゴリーに分けられて行われています。共有資源の管理においても互酬が重要な役割を果たしています。

寄付

また、社会的な寄付の制度としては、イスラーム社会におけるザカートや土地信託のワクフがあり、これらは再配分の機能も持っています。

互酬と交易

コミュニティ外での互酬は、しばしば交易の形で表れます。トロブリアンド諸島の場合、贈与交易や沈黙交易などがその一例です。交易の不安定さや交渉の失敗が起きると、互酬的な取引ではなく、略奪行為や貢物が現れることもあります。

中世アイスランドでは、外国の商人が農場に滞在する際、地元の指導者から保護を受けながら農作業を手伝うという関係が築かれました。このような客人関係は、他の文化圏でも見られ、多様な形で互酬が機能しています。

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