ゴドルフィンアラビアン

ゴドルフィンアラビアン：サラブレッドの父系を築いた伝説的名馬

サラブレッド三大始祖の一頭として知られるゴドルフィンアラビアン（Godolphin Arabian、1724年頃 - 1753年）。その生涯は謎に満ち、伝説に彩られています。近年の遺伝子解析により、トルコマン系ターク種との血縁関係が示唆される一方で、アラブ種との血縁の可能性も残されています。正確な誕生地や初期の呼び名も不明瞭で、様々な説が飛び交っています。

謎に包まれた生涯

一般的には、黒鹿毛の気性豊かな馬として描かれています。チュニスからフランスへ献上品として渡り、その後イギリスへと渡航。エドワード・コークのもとで乗馬や種牡馬として活躍しました。その後の所有者はロジャー・ウィリアムズ、そして最終的にはゴドルフィン伯フランシス・ゴドルフィンとなりました。ゴドルフィン伯の名を冠してゴドルフィンアラビアンと呼ばれるようになったのは、この頃からです。

ゴドルフィンアラビアンは、約90頭の仔を残しました。その中でも特に有名なのは、ラスとケードです。ラスはフライングチルダーズ以来の名馬と謳われ、ケードはマッチェムの父となり、サラブレッドの歴史に大きな足跡を残しました。ゴドルフィンアラビアンは1753年、ゴドルフィン伯の牧場で亡くなりましたが、その墓は現在も残されています。

遺伝子レベルでの影響

ゴドルフィンアラビアンの遺伝子レベルでの影響は、他の三大始祖を凌駕しています。サラブレッドの遺伝子プールの13.8％がゴドルフィンアラビアン由来であり、これはダーレーアラビアン、バイアリーターク、カーウェンズベイバルブの合計に匹敵する規模です。18世紀中頃には、サラブレッド全体の50％以上を占めていたと推定されています。現在でも、父系子孫は存在し続けています。

親友猫との絆

ゴドルフィンアラビアンは、グリマルキンという猫と深い絆で結ばれていたと言われています。気性の荒い彼でしたが、グリマルキンには心を開いていたと伝えられています。二匹の死についても様々な説があり、同時に死んだという説と、先にグリマルキンが亡くなり、ゴドルフィンアラビアンは以後猫を嫌うようになったという説があります。

名馬としての成功と子孫

ゴドルフィンアラビアンは多くの名馬を輩出しました。彼の血統は、マッチェムを通じてサラブレッド界に大きな影響を与えました。しかし、その後ヘロドやエクリプスといった名馬の台頭により、その影響力は徐々に薄れていきました。

ゴドルフィンアラビアンを題材とした作品

ゴドルフィンアラビアンの生涯は、小説や映画にも取り上げられています。マーゲライト・ヘンリーの小説『名馬風の王』（原題：King of the Wind）は、ゴドルフィンアラビアンと少年アグバの物語を描いた作品で、多くの創作が含まれていますが、ゴドルフィンアラビアンの生涯に関する伝承を反映した内容となっています。この小説は、1989年には映画『キング・オブ・ザ・ウィンド/疾風の覇者』として映画化もされています。

まとめ

ゴドルフィンアラビアンは、謎と伝説に満ちた生涯を送ったサラブレッド三大始祖の一頭です。その遺伝子レベルでの影響は計り知れず、現代のサラブレッドにも大きな遺産を残しています。小説や映画といった作品を通して、その魅力に触れることができるのも、ゴドルフィンアラビアンの魅力の一つでしょう。彼の生涯は、現代においても多くの謎を残したままですが、その存在はサラブレッドの歴史において永遠に語り継がれていくでしょう。

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