ゴマフスズメ

ゴマフスズメ（胡麻斑雀）

ゴマフスズメ（学名：Passerella iliaca）は、鳥類の分類においてスズメ目に属し、ホオジロ科に分類される一種です。その和名は、体の特定の部位に見られる特徴的な斑紋が、穀物であるゴマのように見えることに由来しています。学名の属名「Passerella」はラテン語の「小さなスズメ」を意味し、種小名の「iliaca」は脇腹を指すとされています。

形態

成鳥の全長は約17センチメートルに達し、同じホオジロ科に属する鳥類の中では比較的大きな部類に入ります。頭部から背中にかけての上面は、やや煤けたような黒褐色を呈しています。対照的に、喉から腹部にかけての体の下面は白っぽい地色をしていますが、その上に密な黒い斑点や縦斑が多数現れます。この下面の模様こそが、和名の由来となった「胡麻斑」であり、本種の識別の大きな特徴となります。しかし、ゴマフスズメには多数の亜種が存在し、地域によって体の色合いや斑紋のパターン、大きさなどに顕著な形態的な変異が見られることが知られています。

分布と生息地

本種の主な生息域は北アメリカ大陸に広がっています。繁殖は主に北部の冷涼な地域で行われ、カナダの広範囲、アラスカ、そしてアリューシャン列島などが主要な繁殖地となります。繁殖期を終えると、多くの個体は冬季を過ごすために南方へ渡ります。その越冬地は、アメリカ合衆国南部からメキシコ北部にかけての温暖な地域に及びます。生息環境としては、平野部や低山帯に広がる森林地帯、特にその林縁や開けた場所を好んで利用します。低木が茂る場所や川沿いの藪なども生息場所となります。

日本においては、ゴマフスズメは極めて稀な迷鳥として記録されています。その観察例は非常に限られており、長らく唯一の記録とされていたのは、1935年11月に栃木県日光市で確認された一例でした。この記録から約半世紀後の1985年冬に、北海道室蘭市で新たな観察記録が加えられましたが、これ以降、現在に至るまで日本国内での確実な観察記録は確認されていません。このように、日本で見られる機会は極めて少ない鳥と言えます。

生態

ゴマフスズメは、生息環境である森林や藪の中で比較的低い位置を活動することが多いと考えられます。鳴き声は特徴的で、「チッ、チッ」という声で頻繁にさえずることが知られています。これは縄張りを主張したり、仲間とコミュニケーションを取る際に発せられると考えられています。食性については、入力情報には詳細がありませんが、一般的にホオジロ科の鳥類は種子や昆虫などを食べる雑食性である場合が多いです。

保全状況

国際自然保護連合（IUCN）が定めているレッドリストにおいては、2001年の評価（Ver. 3.1）で「低危険種（Least Concern）」に分類されています。これは、現時点では絶滅の危険性が低いと評価されていることを意味します。広範囲に分布しており、個体数も比較的安定していると考えられています。

ゴマフスズメは、その特徴的な斑紋と、北米という広い分布域を持つ一方で日本では稀な迷鳥であるという点で、野鳥観察者にとって特別な存在と言えます。

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