ゴルカ王国

ゴルカ王国

ゴルカ王国（ネパール語: गोर्खा、英語: Gorkha）は、16世紀中頃から18世紀後半にかけて、現在のネパールに位置した王朝です。具体的には1559年に成立し、1768年までの約2世紀にわたり存続しました。この王国は、後にネパール全土を統一して成立するネパール王国の前身となった極めて重要な国家です。

歴史

建国と初期の状況

16世紀のネパール地域は、カトマンズ盆地のマッラ朝の分裂をはじめ、多数の独立した小国家が分立する状況にありました。こうした時代背景の中、ゴルカ王国の創始者であるヤショー・ブラフマ・シャハは、まず周辺のカスキ王国（現カスキ郡）を制圧する足がかりを築きました。彼の息子であるドラヴィヤ・シャハは、1559年にゴルカにおいてシャハ朝による政権を樹立し、ゴルカ王国がここに誕生します。建国当初、ゴルカは二四諸国と呼ばれる主要な小国家群にすら数えられないほどの、ごく小規模な勢力に過ぎませんでした。

他国との関係

王国が成立した当時、カトマンズ盆地ではマッラ朝が既に分裂状態にありました。1484年にはバクタプル・マッラ朝からカトマンズ・マッラ朝が独立し、さらに1619年にはパタン・マッラ朝が分立したことで、マッラ朝は三つの王国（カトマンズ、パタン、バクタプル）が鼎立する「三王国時代」を迎えていました。

ゴルカ王国の初期の君主たちは、これらの三都マッラ朝との関係構築に努めます。ラーム・シャハの治世には、パタンを訪問してパタン・マッラ朝との間に友好関係を樹立し、以後しばらく両国の間には友好的な関係が維持されました。続くダンバル・シャハの時代には、1637年にパタンがカトマンズ・マッラ朝の攻撃を受けた際に援軍を派遣しましたが、このゴルカ軍はカトマンズ軍によって退けられました。さらにルドラ・シャハも、1671年にパタン王シュリーニヴァーサ・マッラへの援軍として、マクワンプル・セーナ王国への攻撃に参加させています。

政策の転換と統一への動き

ルドラ・シャハの子であるプリトビパティ・シャハの治世になると、これまでのパタンとの友好一辺倒の政策から転換が図られます。彼は三都マッラ朝に対して、単純な協力ではなく、時にはパタンを孤立させ、またある時にはカトマンズを孤立させるなど、複雑な駆け引きや権謀術数を用いた外交を展開するようになります。

次の君主であるナラ・ブーパール・シャハも同様の戦略を踏襲しました。特に1725年には、三都に対する目まぐるしいほどの外交工作を行い、その後も継続的に影響力を行使し続けます。また、チベットとの交易ルート上の要衝であるヌワコートの奪取を試みますが、この時は三都マッラ朝が結束して抵抗したため、攻略は失敗に終わりました。

ネパール王国の誕生

1743年、ナラ・ブーパール・シャハの子、プリトビ・ナラヤン・シャハが王位を継承すると、ゴルカ王国の歴史は新たな段階に入ります。彼はネパール全土の統一という壮大な目標を掲げ、軍事行動を開始しました。長年にわたる計画と戦闘の末、彼はカトマンズ盆地のネワール族によるマッラ朝三王国を次々と制圧していきます。特に重要な戦いとして、1767年のキルティプルの戦い、そして1768年のカトマンズの戦いが挙げられます。カトマンズ制圧後の同年9月、プリトビ・ナラヤン・シャハはネパール王として即位を宣言しました。さらに翌1769年までには、残るパタンとバクタプルも完全に支配下に収め、カトマンズ盆地の統一を達成します。これにより、ゴルカ王国は拡大・再編され、単なる小国からネパール王国へと発展を遂げることになりました。

こうして、プリトビ・ナラヤン・シャハによって統一された国家は、シャハ朝を王朝として、ゴルカ王国を礎とするネパール王国の歴史を歩み始めたのです。

歴代君主

ドラヴィヤ・シャハ（在位：1559年 - 1570年）
プールナ・シャハ（在位：1570年 - 1605年）
チャトラ・シャハ（在位：1605年 - 1609年）
ラーム・シャハ（在位：1609年 - 1633年）
ダンバル・シャハ（在位：1633年 - 1645年）
クリシュナ・シャハ（在位：1645年 - 1661年）
ルドラ・シャハ（在位：1661年 - 1673年）
プリトビパティ・シャハ（在位：1673年 - 1716年）
ナラ・ブーパール・シャハ（在位：1716年 - 1743年）
プリトビ・ナラヤン・シャハ（在位：1743年 - 1768年）

参考文献

* 佐伯和彦 著『世界歴史叢書 ネパール全史』明石書店、2003年

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