プリトビ・ナラヤン・シャハ

プリトビ・ナラヤン・シャハ：ネパール王国の建国者

プリトビ・ナラヤン・シャハ（1722年12月27日 - 1775年1月11日）は、ゴルカ王国の第10代君主であり、後にネパール王国の初代国王となった人物です。彼の功績は、カトマンズ盆地を統一し、それまで存在した三つのマッラ朝を滅ぼし、今日のネパール王国の礎を築いたことにあります。

生い立ちとゴルカ王即位

1722年、プリトビ・ナラヤン・シャハはゴルカ王ナラ・ブーパール・シャハの息子として誕生しました。父王の時代、ゴルカ王国はカトマンズ盆地への進出を試みましたが、マッラ朝連合軍に阻まれました。若き日のプリトビ・ナラヤンは、バクタプル王やカトマンズ王の王子と親交を深め、3年間バクタプルに滞在し、カトマンズ盆地の情勢を綿密に把握しました。1743年、父王の崩御により、彼はゴルカ王として即位しました。

カトマンズ盆地統一への道

当時のカトマンズ盆地は、カトマンズ、パタン、バクタプルの三つのマッラ朝によって分立していました。プリトビ・ナラヤンは、まず盆地の中間地点に位置するヌワコートを攻撃しましたが、三都マッラの連合軍に阻まれ敗北。しかし、この敗北を機に、インドから新式の銃と火薬を導入し、軍隊を再編。また、外交官を周辺諸国に派遣し、友好関係を築きました。さらに、バクタプル王と同盟を結び、三王国同盟を切り崩す戦略を実行しました。

1744年、プリトビ・ナラヤンは再びヌワコートを攻略し、チベットとの交易路を確保。カトマンズ盆地を囲む要衝を次々と制圧していきました。1760年にはクティ峠を占拠し、盆地とチベットの交易を遮断。1766年にはキルティプルを征服。そして、1768年9月、ついにカトマンズを制圧し、ネパール王として即位。カトマンズを首都とするネパール王国を建国しました。カトマンズ王はパタンへ逃亡しましたが、パタンも制圧し、1769年11月には最後の拠点であったバクタプルを陥落させ、カトマンズ盆地の統一を完了しました。

ネパール王国の拡大

カトマンズ盆地を統一した後も、プリトビ・ナラヤンは東方への領土拡大を目指し、1773年にはチャウダンディー・セーナ王国を、1774年にはビジャイプル・セーナ王国を併合しました。さらにシッキム王国へも侵攻を試みました。彼の治世下でネパールの領土は大きく拡大し、現在のネパールの3分の1以上に達しました。

晩年と遺産

1775年1月11日、プリトビ・ナラヤン・シャハは52歳で亡くなりました。彼の治世は、ネパールを統一国家へと導き、後のネパール王国の発展の基礎を築いたことで歴史に刻まれています。彼は、優れた軍事戦略家であり、外交手腕に長けた指導者でした。彼の功績は、ネパールの国民的英雄として、現在も称えられています。

参考文献
佐伯和彦『世界歴史叢書 ネパール全史』明石書店、2003年。

関連項目
ネパール王国
* ゴルカ朝

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