ゴンサロ・ヴェーリョ・カブラル

ゴンサロ・ヴェーリョ・カブラル（Gonçalo Velho Cabral）は、15世紀に活躍したポルトガルの航海者であり探検家です。彼の生没年は残念ながら今日まで明らかにされていません。

彼はキリスト騎士団に所属する騎士であり、当時のポルトガル王国における海外探検活動の中心人物であったエンリケ航海王子に仕えていました。王子から厚い信頼を寄せられていたカブラルは、大航海時代初期における重要な役割を担うことになります。

彼の最も知られた功績の一つは、大西洋に浮かぶアゾレス諸島周辺の探検です。1427年にディオゴ・デ・シルヴェスという人物がサンミゲル島を発見した後、この未踏の海域に対するポルトガルの関心は高まりました。カブラルは、エンリケ航海王子の命を受け、この地域の更なる調査を託されます。彼は精力的な航海を行い、1431年には岩礁からなるフォルミガス島を、そしてその翌年である1432年には、後にアゾレス諸島の主島の一つとなるサンタマリア島を相次いで発見するに至ります。これらの発見は、アゾレス諸島がポルトガルの勢力圏となる上で極めて重要な一歩となりました。

島々の発見にとどまらず、カブラルはこれらの新発見された土地の開拓にも関与しました。1432年のサンタマリア島発見と同時期に、彼はいくつかの島に家畜、特に牧畜のために牛などを持ち込み、新たな生活基盤を築くための試みを始めました。しかし、新たな環境での牧畜の確立と、それが島民の生活に定着し、他の島々にも広まるまでには、かなりの時間が必要でした。サンタマリア島で牧畜が本格的に根付いたのは、彼が導入してから7年後の1439年になってからのことです。さらに、1427年に先行して発見されていたサンミゲル島においては、牧畜が広く行われるようになるまで、さらに時間を要し、カブラルによる最初の試みから12年後の1444年まで待たなければなりませんでした。これは、当時の開拓がいかに困難を伴う事業であったかを示しています。

長きにわたり、ゴンサロ・ヴェーリョ・カブラルこそがアゾレス諸島全体の発見者であると信じられてきました。この認識は、16世紀後半の歴史家ガスパル・フルトゥオソが著した歴史書に記された記述に基づいています。フルトゥオソの著作では、カブラルが1432年までに7つの島を探検したとされており、これがアゾレス諸島発見の主要な功績として認識されてきたのです。

しかし、20世紀に入ると、ポルトガルの歴史家であるダミオン・ペレスが新たな研究成果を発表しました。ペレスは、1439年に作成された海図などを詳細に分析した結果、1427年にサンミゲル島を発見したディオゴ・デ・シルヴェスこそが、アゾレス諸島の最初の発見者であると結論づけました。この研究を境に、歴史学会におけるアゾレス諸島発見者の認識は大きく変わり、現在では一般的にディオゴ・デ・シルヴェスが正当な発見者として認められています。

ゴンサロ・ヴェーリョ・カブラルは、アゾレス諸島全体の最初の発見者ではありませんでしたが、エンリケ航海王子の重要な家臣として、この地域の探検と初期の開拓において中心的な役割を果たしました。フォルミガス島やサンタマリア島の発見、そして牧畜の導入といった彼の功績は、ポルトガルの大西洋進出史における重要な一章を形作っています。彼の名前は、発見者としての誤解は解消されたものの、アゾレス諸島の歴史を語る上で欠かせない人物として、今日でも記憶されています。

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