ゴンザレス郡 (テキサス州)

ゴンザレス郡は、アメリカ合衆国テキサス州の南中央部に広がる歴史ある郡です。総面積はおよそ2,771平方キロメートルに及び、その大部分は豊かな陸地で構成されています。2010年の国勢調査では19,807人の人口が記録されており、これは2000年の18,628人から6.3%の増加を示しています。郡の行政の中心地であるゴンザレス市は、郡内で最も人口が多い都市でもあり、郡名の由来ともなっています。ゴンザレス市は、かつてコアウイラ・イ・テハス州の知事を務めたラファエル・ゴンザレスに敬意を表して名付けられました。

この地域の歴史は古く、最初に足跡を残したのは狩猟採集民であるパレオ・インディアンでした。その後、この地はコアウイルテカン族、トンカワ族、カランカワ族、コマンチ族、ウェーコ族など、様々なインディアン部族の居住地となりました。16世紀から17世紀にかけて、スペインやフランスがこの地に対する領有を主張しましたが、その支配は永続的なものではありませんでした。19世紀初頭にメキシコがスペインから独立すると、テキサスへの入植が活発化します。

1825年、メキシコ政府はグリーン・デウィットによるテキサスへの入植地設立の請願を承認しました。これにより、ゴンザレスの町が設立され、コロラド川以西におけるイギリス系入植者による最初の町となりました。1828年にフランス人学者ジャン＝ルイ・ベルランディエがこの地域を訪れた際、彼は開拓者たちの質素な丸太小屋や防柵に囲まれた集落、農耕や家畜飼育の様子、そしてトンカワ族やカランカワ族の集落が存在していることを記録しています。

メキシコ時代の重要な出来事として、1829年9月15日にビセンテ・ゲレロ大統領が発した奴隷解放宣言があります。この宣言は「この共和国で奴隷制度は廃止される」と明確に述べ、テキサス入植者の間で大きな議論を呼びました。また、コアウイラ・イ・テハス州政府は、増加するインディアンの襲撃からゴンザレスの町を守るため、1831年に防衛用の6ポンド砲を配備しました。この大砲は、後にテキサス革命の象徴となります。

テキサスとメキシコ政府の関係が悪化する中、1835年9月、メキシコ政府は植民地の会議を反逆と見なし、ゴンザレスの大砲回収を目的とした軍隊を派遣しました。しかし、10月2日、ゴンザレスの町でテキサス入植者たちがメキシコ軍と衝突し、これがテキサス革命の端緒となる「ゴンザレスの戦い」が勃発しました。入植者たちは大砲をメキシコ軍に向け、「ここに来て取って見ろ」と書かれた有名な旗を掲げて抵抗しました。この出来事は、現在も毎年開催される祭りで記念されています。革命はベハル包囲戦などの初期作戦へと拡大していきました。

テキサス革命の最中である1836年、ゴンザレス郡は正式に組織されました。アラモ砦が包囲されると、ゴンザレスは救援部隊の結集地となりました。アラモからの伝令が救援を求め、ジョージ・C・キンブルに率いられた32名のゴンザレス部隊がアラモへと向かい、3月1日に合流しました。しかし、その数日後にはアラモは陥落しました。アラモの悲劇を生き延びたスザンナ・ディキンソンが娘と共にゴンザレスに到着し、陥落の知らせを伝えた後、サミュエル・ヒューストン将軍は追撃するメキシコ軍を遅らせるため、ゴンザレスの町を焼却する決断を下しました。ヒューストンはゴンザレス郊外に作戦本部を置き、サンジャシントへと向かいました。テキサスは3月2日に独立を宣言し、テキサス共和国が樹立されました。革命は、4月21日のサンジャシントの戦いでの勝利とサンタ・アナ将軍の捕縛、そしてバレスコの条約締結によって終結しました。

テキサス共和国時代には、1838年にウォルナットスプリングスの町が建設されるなど、郡内の開発が進みました。1840年には、コマンチ族との間でプラムクリークの戦いが発生し、ゴンザレスの住民もこれに参加しました。1845年12月29日、テキサスはアメリカ合衆国に併合され、その直後の1846年には米墨戦争が勃発、1848年のグアダルーペ・ヒダルゴ条約によって終結しました。戦後、1850年には奴隷所有の農園主によってゴンザレス・カレッジが設立され、これはテキサスで初めて女性に学士号を授与した教育機関として知られています。また、1853年には地元紙「ゴンザレス・インクワイアラー」が創刊されるなど、社会基盤が整備されました。南北戦争前夜の1860年には、郡人口8,059人のうち3,168人が奴隷でした。

南北戦争の勃発に際し、1861年には郡内で合衆国からの脱退を支持する住民投票が行われ、圧倒多数で脱退が可決されました。テキサス州は合衆国を脱退し、アメリカ連合国に加盟しました。戦争中の1863年にはエイブラハム・リンカーン大統領による奴隷解放宣言が布告されましたが、連合国支配下のテキサスではその実施は遅れました。戦争が終結した1865年、テキサスへの奴隷解放令の正式な伝達は6月19日までずれ込み、これが現在「ジューンティーンス」として記念されるようになりました。同年12月6日には、合衆国憲法修正第13条によって奴隷制度が全米で禁止されました。戦後再建期には、悪名高いジョン・ウェズリー・ハーディンを巻き込んだサットン＝テイラー抗争が発生し、テキサス州史上でも有数の激しい抗争となりました。ハーディンは郡内のピルグリムに潜伏していたとされます。1870年3月30日には、テキサス州の合衆国への再加盟が承認されました。

19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ゴンザレス郡は鉄道網の発展によって大きく変わりました。ガルベストン・ハリスバーグ・アンド・サンアントニオ鉄道をはじめ、いくつかの鉄道路線が郡内を通り、地域の経済活動を促進しました。ジョン・ウェズリー・ハーディンは、1894年に釈放された後、ゴンザレスに戻り弁護士として活動したという異色の経歴も残しています。郡は国の戦争にも貢献し、米西戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦には多くの郡民が従軍し、犠牲者を出しました。1935年には、テキサス革命の発端を記念する記念碑がコストの町に建立され、1930年代後半にはパルメット通り公園が開園し、ゴンザレス温泉財団がポリオの治療を開始するなど、地域社会の発展も進みました。

ゴンザレス郡の面積は約2,771平方キロメートルで、主要な交通網として州間高速道路10号線やアメリカ国道90号線、87号線などが郡内を通過しています。隣接する郡には、ファイエット郡、ラバカ郡、デウィット郡、カーンズ郡、ウィルソン郡、グアダルーペ郡、コールドウェル郡があります。郡内には郡庁所在地のゴンザレス市のほか、ニクソン、スマイリー、ウィールダーといった都市があり、さらにベベ、ベルモント、コスト、ハーウッド、リースビル、オッタイン、ピルグリム、ライツボロなどの未編入の町が点在しています。

このように、ゴンザレス郡は先住民の時代からテキサス革命の中心地、南北戦争、そして近現代に至るまで、テキサスの激動の歴史を体現する地域です。その豊かな歴史遺産は、現在もこの地に息づいています。

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