ゴンダール

エチオピアのアムハラ州に位置するゴンダールは、標高およそ2250メートルのエチオピア高原上に広がる歴史的な都市です。タナ湖の北に位置し、かつてはエチオピア帝国の首都として栄華を誇りました。

ゴンダールの歴史は、17世紀に皇帝に即位したファシラダス帝が新たな都の建設を始めたことに端を発します。それまでの移動宮廷から脱却し、エチオピアで初めての定住首都として造営が進められました。

都市の中心には王宮複合体であるファジル・ゲビが築かれました。その建設は1632年に始まり、ポルトガルやインドからの工匠たちの技術も取り入れられました。ゴンダールが最盛期を迎えたのは、イヤス1世の治世（1682年～1706年）の頃です。この時期には、エチオピア自身の職人たちが独自の技術で建築を担うほどに成長しました。ゴンダールの都市構造は、ヨーロッパの王宮都市とは大きく異なり、王宮群の周囲に諸侯が集まる一方で、彼らの軍営がそのまま居住区域へと発展していきました。さらに、この都市では民族ごとの棲み分けが見られ、低地にはムスリム、町外れの谷間にはユダヤ人（ファラシャ）の居住区が形成されるなど、全体として分散した独特な街並みが特徴でした。

しかし、18世紀の中期には、相次ぐ地震や内部の紛争によってゴンダールの繁栄にかげりが見え始めます。そして1855年、皇帝テウォドロス2世がデブラ・マルコスへ遷都したことで、ゴンダールは帝国の首都としての地位を失いました。その後、皇帝派からの二度にわたる攻撃や、スーダンのマハディスト勢力による略奪に見舞われ、街は荒廃し、多くの住民がこの地を離れることとなりました。

20世紀に入り、1936年から1941年のイタリア占領下では、ゴンダールはイタリア領東アフリカ帝国アムハラ州の州都とされました。この時期、植民地時代の都市改造が進められ、イタリア人の居住を目的とした新たな市街地が市街北部を中心に計画・建設されました。1974年に発生したエチオピア革命とその後の社会主義政権下では、都市の発展は停滞期を迎えました。

社会主義政権が崩壊した1991年以降、ゴンダールには農村部からの顕著な人口流入が見られるようになり、都市は再び変化の時を迎えます。スーダンからの石油輸送路の中継地としての可能性も期待され、今後の発展が見込まれています。2000年からは、中心部の歴史地区保護と周辺部の新市街地整備を柱とするマスタープランの改訂が進められており、世界遺産登録地域とスラムが共存する複雑な街並みにおける新たな歴史環境保護のあり方について、慶應義塾大学とアジスアベバ大学の共同研究チームも交え、議論が重ねられています。現在、ゴンダールはエチオピアを代表する主要な観光地の一つとして国内外に知られています。

ゴンダールに残る最も重要な遺産の一つが、ソロモン朝ゴンダール期に建設された三つの王宮群、特にその最大規模を誇るファジル・ゲビです。この王宮複合体には、歴代の皇帝が築いた六つの宮殿や十二の城門が今も残されており、1979年にはユネスコの世界遺産に登録され、その歴史的価値と文化的景観が保護されています。これらの建築群は、当時のエチオピアの建築技術と文化交流の痕跡を示す貴重な証です。

近年の人口は増加傾向にあり、1984年の約8万人から、2007年には20万人を超え、2023年には48万人を超える規模となっています。

ゴンダールは、その壮麗な歴史遺産と現代都市としての課題が共存する、魅力あふれる都市です。

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