ファジル・ゲビ

ファジル・ゲビは、エチオピアのゴンダールに位置する小高い丘に広がる王宮群です。17世紀から18世紀にかけて、この地を首都としたゴンダール期（ソロモン朝の一部）の歴代皇帝たちが、居城や聖堂を建設しました。1979年にはユネスコの世界遺産に登録され、その歴史的・文化的な価値が世界的に認められています。

建造物群

ファジル・ゲビには、歴代皇帝によって建てられた様々な建造物が残っています。それぞれの建築物は、当時の政治や文化を反映しており、その多様性が見どころです。

ファシリデス帝（Fasilides, 在位1632年 - 1667年）
ファシリデス帝の宮殿：城、聖堂、修道院などを含む複合的な建築物です。彼の治世に建設されたこれらの建物は、ファジル・ゲビの中心的な存在となっています。
ヨハンネス1世帝（Yohannes I, 在位1667年 - 1682年）
ヨハンネス1世の図書館：学術的な活動を重視したヨハンネス1世によって建てられた図書館は、当時の知識と文化の集積地でした。
国璽文書館：国家の重要な文書を保管する施設で、政治の中心的な役割を担っていました。
イヤス1世帝（Iyasu I, 在位1682年 - 1701年）
イヤス帝の宮殿：イヤス1世の時代に建てられた宮殿は、その後の建築様式にも影響を与えました。
ダウィト3世帝（Dawit, 在位1716年 - 1721年）
歌の館：音楽や芸術を愛したダウィト3世が建てたこの館は、文化的な交流の場でした。
宴の館：華やかな宴が催されたこの館は、当時の宮廷文化を今に伝えています。
バカッファ帝（Bakaffa, 在位1721年 - 1730年）
謁見の間：皇帝が臣下と会見した場所で、政治の中心的な場所でした。
皇妃メントゥワブの宮殿：皇妃メントゥワブのために建てられた宮殿は、優雅な装飾が施されています。

ゴンダール様式

ファジル・ゲビに並ぶ石造建造物群は、ゴンダール様式と呼ばれる独特の建築様式を持っています。この様式は、イスラーム建築、インド建築、バロック建築など、様々な文化の影響を受けており、その多様性が特徴です。これらの建築物は、異なる文化の融合を示す貴重な例として評価されています。

世界遺産登録基準

ファジル・ゲビが世界遺産として登録された背景には、以下の2つの登録基準を満たしていることが挙げられます。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。
この基準は、ファジル・ゲビの建築様式が、様々な文化の交流の結果として生まれたことを示しています。ゴンダール様式は、当時の国際的な交流を反映しており、その独自性が評価されました。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠。
この基準は、ファジル・ゲビが、ゴンダール期の文化や文明を現代に伝える貴重な証拠であることを示しています。この地域特有の文化と歴史を今に伝える重要な遺産です。

参考文献

中川武, 三宅理一, 山田幸正（監修）『世界遺産を旅する・第12巻（エジプト・アフリカ）』近畿日本ツーリスト、1999年
* 青柳正規編『ビジュアル・ワイド 世界遺産』小学館、2003年

これらの書籍は、ファジル・ゲビに関する詳しい情報を提供しており、より深く理解するための参考になります。ファジル・ゲビは、エチオピアの歴史と文化を象徴する重要な遺産であり、訪れる人々に深い感動と学びを与えてくれる場所です。

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