ゴースト・イン・ザ・マシーン

『ゴースト・イン・ザ・マシーン』：ポリスのサウンド変革期を捉えた傑作

ポリスが1981年に発表した通算4枚目のスタジオ・アルバムが『ゴースト・イン・ザ・マシーン』（Ghost in the Machine）である。前作までのレゲエやパンクからの影響を受け継ぎつつも、シンセサイザーを積極的に導入するなど、より洗練されたポップかつ実験的なサウンドへと歩みを進めた意欲作として、バンドのキャリアにおける重要な転換点を示す作品と位置づけられている。

音楽メディアからの評価も非常に高く、アメリカの権威ある音楽雑誌『ローリング・ストーン』が選定した「オールタイム・グレイテスト・アルバム500」では、323位にランクインを果たしている。これは、発表から長い年月が経過してもなお、本作が持つ普遍的な魅力と音楽的な価値が認められていることの証と言えるだろう。

収録曲

アルバムは全11曲で構成されており、バンドのフロントマンであるスティングが楽曲の大半を手掛けている。しかし、ギタリストのアンディ・サマーズとドラマーのスチュワート・コープランドも、それぞれ単独あるいはスティングとの共作で作曲に参加しており、メンバーそれぞれの音楽性がアルバム全体の多様性に貢献している。収録曲は以下の通りだ。

マテリアル・ワールド (Spirits in the Material World) [作曲: スティング] 2:59
マジック (Every Little Thing She Does Is Magic) [作曲: スティング] 4:22
インヴィジブル・サン (Invisible Sun) [作曲: スティング] 3:44
ハングリー・フォー・ユー (Hungry for You (J'aurais Toujours Faim de Toi)) [作曲: スティング] 2:53
破壊者 (Demolition Man) [作曲: スティング] 5:57
トゥ・マッチ・インフォメーション (Too Much Information) [作曲: スティング] 3:43
リヒューマナイズ・ユアセルフ (Rehumanize Yourself) [作曲: コープランド, スティング] 3:10
ワン・ワールド (One World (Not Three)) [作曲: スティング] 4:47
オメガマン (Omegaman) [作曲: サマーズ] 2:48
シークレット・ジャーニー (Secret Journey) [作曲: スティング] 3:34
暗黒の世界 (Darkness) [作曲: コープランド] 3:14

特筆すべき楽曲

アルバムを構成する楽曲群の中でも、特にメッセージ性や背景において話題を呼んだのが、「インヴィジブル・サン」と「破壊者」である。

インヴィジブル・サンは、当時英国で激化していた北アイルランド紛争という重い社会問題をテーマにしている。この曲に込められたメッセージと、それに伴って制作されたビデオ・クリップは、そのセンシティブな内容ゆえに、英国放送協会（BBC）で放送禁止措置を受けるという異例の事態を招いた。

一方、「破壊者*」は約6分という演奏時間を持ち、これはポリスが公式にリリースした楽曲の中では最も長い部類に入る。この曲には興味深いエピソードがある。元々はスティングが同じ1981年にシンガーのグレイス・ジョーンズに提供した楽曲「Demolition Man」を、ポリス自身がよりロック色の強いアレンジでセルフカバーしたものである。さらに、このバージョンは後年、1993年に公開されたシルヴェスター・スタローンとウェズリー・スナイプス主演のSFアクション映画『デモリッションマン』の主題歌として採用され、スティングによって改めてソロ名義でレコーディングされたバージョンが発表されている。

日本盤CDの特色

日本国内で2003年にリリースされたリマスター盤や紙ジャケット仕様のCDは、当時のCDとしては先進的なエンハンスドCD形式で提供された点が特筆される。これにより、通常の音楽CDとしての機能に加え、コンピュータでアクセス可能なCD-ROM部分に、アルバムからの大ヒットシングルである「マジック」のプロモーションビデオが特別コンテンツとして収録されており、日本のファンにとっては嬉しい特典となった。

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