ゴースト障害

ゴースト障害とは

ゴースト障害とは、テレビやラジオなどの受信時に、映像や音声が本来の時間軸からずれて見える（聞こえる）現象のことです。これは、電波が複数の経路を通って受信されることで発生します。

具体的には、本来の映像や音声のほかに、時間的に少しずれた映像や音声が重なって見える（聞こえる）状態を指します。まるで幽霊（ゴースト）のように見えることから、この名が付けられました。

ゴースト障害の原因

ゴースト障害の主な原因は、以下の2つです。

1. マルチパス：電波が反射などによって複数の経路を通って受信される現象です。例えば、建物や山などで反射した電波が、直接届く電波と異なるタイミングでアンテナに届くことで発生します。
2. インピーダンス不整合：高周波回路のインピーダンスが統一されていないことで、電波が反射してしまう現象です。これにより、余分な反射波が発生し、ゴースト障害を引き起こします。

これらの原因となるものは、以下のようなものが挙げられます。

ビル（ビル影やビル反射）
送電線の鉄塔（送電線鉄塔影や送電線鉄塔反射）
ゴルフ練習場のネット
高速道路や高架鉄道の構造物

前ゴーストと後ゴースト

ゴースト障害には、主に2種類あります。

前ゴースト：本来の映像や音声よりも時間的に前に現れるゴーストです。
後ゴースト：本来の映像や音声よりも時間的に後に現れるゴーストです。

通常、マルチパスによるゴーストは後ゴーストとして現れますが、電波の経路によっては前ゴーストになることもあります。また、インピーダンス不整合によるゴーストは後ゴーストとして現れます。

ゴーストは、単独で現れるだけでなく、複数重なって現れることもあります。

後ゴースト

後ゴーストは、マルチパスによって反射した電波が、直接波よりも遅れてアンテナに届くことで発生します。また、インピーダンス不整合によっても発生します。この場合、反射した電波は、直接波よりも余計に時間がかかるため、映像や音声が遅れて表示されます。

前ゴースト

前ゴーストは、直接波が弱く、複数の反射波の中で最短でないものが最も強い場合に発生します。また、アンテナに直接電波が届く場合も、アンテナ線に沿って流れる電波よりも、直進する電波の方が早くアンテナに到達するため、前ゴーストが発生します。

ゴーストのない放送

現在では、ゴースト障害はほとんど見られなくなりました。

衛星放送：パラボラアンテナは指向性が強く、直接波しか受信しないため、マルチパスによるゴーストはほとんど発生しません。ただし、インピーダンス不整合によるゴーストは発生することがあります。
デジタル放送：デジタル放送は、高周波のノイズを復調過程で除去するため、ゴーストは発生しません。もし、強いノイズがあれば、ブロックノイズとして画面がモザイク状になるか、全く映らなくなります。

ゴースト除去

かつてのアナログ放送では、ゴースト除去は重要な技術でした。主な方法としては、以下の2つがあります。

1. チューナー内での高周波処理：ゴースト除去用の基準信号を利用して、高周波の段階でゴーストを除去する方法です。
2. 動画加工ツール：動画データのゴーストを除去する機能を持つツールもあります。

これらの方法で、ゴーストをある程度除去することはできますが、ゴーストが複雑に発生している場合は、完全に除去することは困難です。

現在では、デジタル放送が主流となり、ゴースト障害に悩まされることはほとんどなくなりました。しかし、アナログ放送の時代には、このゴースト障害は、非常にやっかいな問題でした。

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